2017年12月6日水曜日

精神科における漢方薬の処方


医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師

漢方薬と西洋薬の違いについて教えてください。
 西洋薬は原因のはっきりしない不定愁訴(しゅうそ)などに対応しづらいのですが、体全体を治すという発想の漢方薬なら有効なケースがよくあります。漢方薬は西洋薬に比べ、一般的に即効性は劣るものの副作用が少ない傾向にあります。ただし、まったく副作用がないわけではありません。また、漢方薬の持つ神秘的なイメージから、漢方薬だけで治療を望む方もいらっしゃいますが、効果の切れ味という点では、西洋薬に軍配があがることが多く、例えば、統合失調症や双極性感情障害(躁うつ病)、軽症以外のうつ病、てんかんについては西洋薬による治療を第一とするのが一般的です。
 つまり、漢方薬も西洋薬もそれぞれ長所と短所を併せ持っているわけです。両者は効果、副作用、治療期間などの特徴が異なるので、患者さんの状態によって使い分けたり、併用したりすることが大切です。

精神科ではどのような時に漢方薬を処方するのですか。
 高齢者に多い認知症の治療では、患者さんの家族を困らせる攻撃性、幻覚、妄想など周辺症状を和らげるために抑肝散(よくかんさん)という漢方薬が使われています。
 生理が近づくとイライラしたり気分が落ち込んだり心身ともに不調になってしまう、こんな悩みを持つ女性は多いです。月経前症候群というこうした症状や更年期障害などに使われるのが加味逍遙散(かみしょうようさん)です。イライラだけでなく、肩こりや不安感など多岐にわたる不調を和らげます。
 痛みやまひなど何らかの身体的な症状が出ているのに、検査をしても異常が見つからず、他の精神疾患もない病態を身体表現性障害と呼びます。ストレスや不安などの心理的な要因が作用して、身体症状があらわれると考えられています。代表的な症状の一つであるのどの異物感には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、胸苦しさには柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが有効です。
 その他、トラウマによるフラッシュバックに有効な漢方薬の処方として四物湯(しもつとう)と桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)の組み合わせがあります。また、発達障害の方や、敏感で繊細な方は、西洋薬は刺激が強すぎて飲めないことがあり、漢方薬を中心に対応するケースもあります。

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