2016年9月28日水曜日

たかが便秘?


ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 副院長

便秘について教えてください。
 毎日朝食後に排便できるのが理想的ですが、排便習慣には個人差が大きく、2〜3日に1回の排便でも腹痛や膨満感などの苦痛がなければ便秘とはいいません。
 便秘は「器質性便秘」と「機能性便秘」に大きく分けられます。器質性便秘は大腸がんなどの病気によって腸が狭くなり、便が通過しにくくなるために生じます。「便が細く少量ずつになってきた」「すっきりしなくて残便感が多くなった」など、排便習慣に変化が出てきた時には内視鏡検査を受けて原因を調べる必要があります。
 一方、機能性便秘は腸のぜん動から排出に至る排便機能の低下を原因とし、一般に便秘というとこちらを指すことが多いと思います。女性に多い典型的な便秘では、ぜん動が弱いために大腸の通過が遅くなり、便が長く大腸にとどまるため水分が過剰に吸収されて硬くなり、排出も困難になるという悪循環が生じます。また、食物繊維不足や運動不足、ストレス、咳止めなどの薬、糖尿病などの持病も便秘を悪化させる原因になり得ます。治療はまず規則正しい生活、適度な運動、水分や食物繊維の摂取が大切です。食物繊維の摂取が特に強調されることが多いですが、実はこれで便秘が改善するのは一部の患者さんのみです。

下剤の使い方について教えてください。
 生活習慣で改善しない場合には下剤が投与されます。下剤は「刺激性下剤」と「非刺激性下剤」に大きく分けられます。刺激性下剤は大腸のぜん動を促すことで作用し、即効性がありすっきりさせる効果は高いのですが、耐性・習慣性があります。つまり、続けて服用していると下剤なしでは排便できなくなり、毎日服用しているうちに次第に効果がなくなってどんどん増量せざるを得なくなっていきます。市販薬の多くは刺激性下剤が主成分なので連用は望ましくありません。
 一方、非刺激性下剤は主に便を軟らかくすることで排便を促します。耐性が生じることはなく、毎日服用しても問題のない薬であるため、なるべく非刺激性下剤で排便を調整していくのが望ましい治療法です。安価で安全性の高い薬である「酸化マグネシウム」を処方するケースが多いです。また、最も新しい便秘薬である「ルビプロストン」も有用です。たかが便秘とあなどらないで、症状が続いている方は医療機関で検査や治療を受けることをお勧めします。

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