2016年10月5日水曜日

「心療内科」と「精神科」の違い


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 心療内科 梶 巌

心療内科と精神科の違いは何ですか。
  何か辛いことがあると、お腹が痛んだり、潰瘍ができたりします。頭痛、めまい、立ちくらみも生じます。血圧が上がりもするし、下がりもします。動悸(どうき)や狭心症が悪くなったりもします。このように、身体疾患の中で、病気の発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、そうした面からの治療が必要な病態を「心身症」と呼びます。心身症としての身体疾患を、患者さんの心の痛みや悩みに耳を傾けながら治療を進めていく専門診療科、すなわち、心と身体を同時に、同じ比重で診るのが「心療内科」です。
 一方、「精神科」は、ストレスなどが原因で生じる心の症状、病気を扱う専門診療科です。例えば、強い不安、イライラ、といった神経症や、抑うつ、幻覚、幻聴、妄想などの精神障害の治療を行います。
 ともに心理療法などを駆使しながらも、心療内科は心理社会的因子が絡む身体の病を、精神科は心の病を扱います。もちろん、心身症になったが故に、神経症的に悩むことになるなど、重なる部分も少なくないため、心療内科、精神科のどちらが診るのか迷うケースもあります。

心療内科、精神科の上手なかかり方について教えてください。
 心療内科と精神科の違いは、患者さんはもとより医療関係者でも知らないことが多く、それが今受けている治療に満足できない患者さんを生み出したり、さらなる治療を求めて渡り歩く患者さんを生み出したりする一因になっています。
 現実には心療内科と精神科は、的確に使い分けられてはいません。古くから精神疾患の身体症状を研究してきた精神科医が「精神科・心療内科」を標榜していることが多く、心療内科医が少ないからです。例えば、何らかの身体症状で一般科を受診し、医師から「心療内科へ行きなさい」といわれた患者さんが、それが心身症によるものであっても、心療内科ではなくその殆どが精神科を受診せざるを得ないのが現実です。いくらストレス絡みとはいえ、身体症状すべてを精神科医が診るのは容易ではありません。思ったような医療を受けられないこともあるでしょう。
 心身症は、精神科で扱うことも多いため、心の病気だと思われがちですが、身体の病気です。心身症を扱うのは精神科ではなく、本来は心療内科です。この違いをしっかりと理解した上で、自分が受診するべき医療機関はどちらなのかを区別することが大切です。

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