2016年9月7日水曜日
「禁煙外来」のすすめ
ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長
タバコが主な原因とされる病気について教えてください。
タバコを長年吸っていると、咳や痰が出やすくなる・止まらなくなる、体を動かすと息切れがするなどの症状が出てきます。重症になると息苦しさなどで日常生活にも支障をきたすようになり、最後は慢性呼吸不全と診断され、呼吸器だけでなく心臓や消化器など全身に症状があらわれるなど、生命の危険にもつながる病気を引き起こします。
これらは「慢性閉塞性疾患(COPD)」と呼ばれる、肺への空気の流れが悪くなりうまく息が吐き出せなくなる病気です。以前は「慢性肺気腫」と呼ばれていました。タバコ以外にも大気汚染や粉じんなどが原因となることもありますが、現在は90%以上が喫煙によるものと考えられています。タバコなどの有害な物質を吸い込み肺に炎症が起こった状態が続くことで、痰が増えて気管支が狭くなったり、肺胞が壊れたりして呼吸をすることが難しくなっていきます。
一度壊れた肺胞は二度と元には戻りません。呼吸機能が低下して重症になる前に、できるだけ早く正しい診断を受け治療を開始することが必要です。
禁煙のメリットについて教えてください。
慢性閉塞性疾患の治療は、狭くなった気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が基本となりますが、これだけでは病気の進行は止められませんので、禁煙が必要となります。禁煙のメリットは、肺を病気から守るだけでなく、味覚・嗅覚が鋭敏になる(食事が美味しく感じられる)、冷え性が改善される、骨が強くなる、血圧への悪い影響が減少する、免疫機能が正常になる、がん・脳卒中・心臓病にかかるリスクが減るなど多岐にわたります。
タバコを吸っていると皮膚のハリがなくなり、目尻・口まわりなどのシワが増え実際の年齢よりも老けて見えることがあります。このような喫煙者に特有の顔を「スモーカーズ・フェイス」といい、ほかにも歯や歯茎の着色、唇の乾燥、口臭なども伴います。タバコは健康に害があるだけでなく、美容的にも悪影響であることは明らかです。副流煙を含め他人のタバコの煙を吸う受動喫煙の研究も進み、問題点が広く意識されるようになりました。自分と周囲の大切な人たちのためにも、症状のあるなしにかかわらず、一度、禁煙外来を訪れてみてください。
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