2016年2月10日水曜日
「兎眼(とがん)」
ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長
兎眼(とがん)とはどのような病気ですか。
兎眼とは、瞼(まぶた)を完全に閉じることができなくなった状態です。ウサギが目を開けて眠ると信じられていたことから名付けられたようです。原因の一つとして挙げられるのは、顔面神経麻痺(まひ)です。顔の左右どちらかの麻痺は、おでこの皺(しわ)がなくなったり、口が開けっ放しになったりする症状のほか、目を閉じられなくなることもあります。瞼が常に開いている状態になると、眼表面が乾燥しドライアイになり、同時に目の下方に涙がたまる涙目となります。目の乾燥が進行すると、角膜潰瘍や角膜混濁が生じ、視力の低下を引き起こすこともあります。
顔面神経麻痺以外の原因で軽い兎眼になっているケースも多くみられます。まばたきの浅い人(瞬目不全)や、夜寝ている間、特に朝方、瞼が開いて白目や黒目の下方がみえている人(夜間兎眼)などです。近年は、瞼を人工的に二重にするため皮膚に塗ったり貼ったりするノリやテープが出回っており、これらにより瞼が引きつってしまい兎眼状態を作り出しているケースもあります。そのほか、瞼の外傷・瘢痕(はんこん)、眼瞼(がんけん)下垂手術・重瞼手術後の後遺症や、甲状腺機能亢進(こうしん)症に伴う眼球突出、眼窩(がんか)腫瘍などの病気が原因となり、目を閉じられなくなっていることもあります。
兎眼の治療について教えてください。
兎眼が軽度の場合(涙が眼表面に比較的正しく分布するような場合)、通常のドライアイの治療で経過をみます。ジクアホソルナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、人工涙液の点眼を組み合わせて使用し、乾燥を防ぎます。睡眠中に症状がみられる場合は、就寝時に眼軟こうを塗布することで対応します。顔面神経麻痺の場合、その原因治療を行うとともに、目を閉じた状態で上から専用保護膜を貼ったり、場合によっては一時的に上下の瞼を縫合したりするなどして、症状の進行を防ぐこともあります。兎眼が重度の場合、または保存的治療が功を奏しない場合は、形成外科などでの手術療法が必要となります。
一般に、眼科診療所でみられる兎眼は軽度なものが大半で、単にドライアイと診断されていたり、見過ごされていたりするケースも多いです。目の表面の強い乾き、ごろつき感、痛みなどがある時は、専門医にご相談ください。
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