2014年11月5日水曜日

摂食障害


ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 畠上 大樹 医師

摂食障害とはどのような病気ですか。
 摂食障害はさまざまな心理的・社会的な要因から、体重や体型の変化に過度にこだわり、食行動に異常を起こす病気です。10〜20代の若い女性を中心に増加しています。大きく分けて、極端に食事を制限する拒食症と、過剰に食べる過食症があります。いずれも太ることへの恐怖感を持っており、拒食の反動から過食に変わるケース、拒食と過食を繰り返すケースなどさまざまです。
 摂食障害と同時にうつの症状や、感情、行動、人間関係が不安定になる境界性人格障害が現れることも多いです。また、極端な低体重や肥満を招くため、栄養失調による生理不順や骨粗しょう症、感染症、肝機能障害などさまざまな身体的症状がみられるようになり、日常生活に支障を来します。
 患者さんの多くは、生まれつき繊細な性格・体質であり、自分のことを低く評価し、不安を抱えています。その背景には、成長する過程で自分の存在を認めてもらえなかった環境や、自分の思いを我慢しながら、周囲の願いを達成する形で生きてきた経験などがあります。摂食障害の原因を特定することは非常に難しいため、原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていくことが重要です。

摂食障害の治療について教えてください。
 拒食症の人はどんなにやせても、自分が病気だという認識を持てないことが多いです。また過食症の人は、自分が悪い、恥ずかしいという思いから問題を一人で抱え込んでしまう傾向があります。摂食障害の治療は、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、“病気“であると認識してもらうことから始まります。病気の発症は「これまでの生き方はもう無理で、一人では頑張れない」という意味にも捉えることができます。この自分自身のメッセージを素直に受け取り、周囲に相談することが大切です。
 治療に特効薬はありませんが、精神科や診療内科などの医師とのカウンセリングによる認知行動療法や、自助グループでの対話に効果が認められています。一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、必ず治る病気です。あせらず、あきらめず、ゆっくりと治療を続けることが第一です。

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