2014年11月19日水曜日
禁煙治療
ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師
喫煙の害とタバコをやめられない理由について教えてください。
日本では現在約2000万人が喫煙しています。タバコは、さまざまながんや虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周病などの原因になります。タバコの煙には4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち約60種類に発がん性が認められています。
喫煙は喫煙者自身の健康への影響に加え、周囲の人たちの健康にも影響を及ぼしています。これを受動喫煙といいます。タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む煙(主流煙)と、タバコから立ち上る紫煙(副流煙)があり、有害物質は副流煙に多く含まれます。
禁煙を始めても、ついまたタバコを吸ってしまうのは、タバコの煙に含まれるニコチンに強い依存性があるからです。タバコを吸うと、ニコチンが肺から血中に入り、すぐに脳に達します。脳にはニコチン受容体という組織があり、ニコチンが結合すると快感を生じさせる物質(ドーパミン)が放出されます。これを繰り返すうちに、ニコチンがないとイライラするなどの禁断症状が出現し、依存症に向かってしまうのです。
禁煙治療はどのように進められるのですか。
現在、常習喫煙は「ニコチン依存症」という名の「病気」とされ、外来での治療には医療保険が適用されるようになりました。
禁煙治療薬には大きく分けて二つあります。一つは、ニコチンガムとニコチンパッチです。タバコ以外の方法でニコチン量を調節する方法(ニコチン置換療法)です。ガムは口の粘膜から、パッチは1日1枚を腕や背中などに貼付することでニコチンを吸収し、段階的にニコチンの量を減らしていきます。
もう一つは、服用するとタバコを吸ってもおいしいといった満足感を覚えにくくする飲み薬です。薬の成分がニコチンの代わりに脳のニコチン受容体と結びつき少量のドーパミンを放出し、イライラなどの症状を軽くします。また、ニコチンが受容体に結びつくのを邪魔するため、タバコを吸いたいという切望感が軽減され、スムーズに禁煙できる仕組みとなっています。この薬はニコチンを含まないため、ニコチン置換療法が難しい心血管疾患のある人にも使用できます。ただし、内服中の自動車の運転が禁止されるなど、いくつかの制限もあります。
禁煙治療を希望する人は、医師とよく相談の上、自分に合った治療法を選択することが大切です。
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