2014年10月8日水曜日

うつ病とアルコール問題


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 山本 芳正 診療部長

うつ病とアルコール依存症の関連性に注目が集まっているのはなぜですか。
 うつ病とアルコール依存症の合併は頻度が高く、うつ病の人が悩みや苦しみから逃れるためにお酒を飲み、酒量が増えてアルコール依存症になる場合や、逆にアルコール依存症の人がお酒をたくさん飲むことで、うつ症状を悪化させてしまうケースなどいくつかのパターンに分かれます。うつ病とアルコール依存症が互いに誘発し合い、症状を悪化させることもさまざまな研究で指摘されるようになりました。また、うつ病もアルコール依存症も、それぞれ単独でも自殺のリスクは高いことが知られていますが、併発でさらにリスクが高まることも指摘されています。
 うつ病、アルコール依存症の診療では、それぞれの病気の併存に注意が必要です。この併存を正確に診断することが、治療方針を立てる上で重要になります。

アルコール問題について教えてください。
 2004年度のデータでは、アルコール依存症の疑いのある人は440万人、治療が必要な人は全国で80万人といわれていますが、専門治療を受けている人は、その中の2万人に過ぎません。
 飲酒量を表す単位を「ドリンク」といい、純アルコール換算で10gが1ドリンクです。節度ある適度な飲酒は、男性では2ドリンク以下が1日当たりの適量とされています。2ドリンクは、ビール500ml缶1本に相当します。1日の飲酒量が、6ドリンクを超えると多量飲酒となり、アルコール依存症になるリスクが高まると警告されています。
 健康に害をもたらすようなお酒の飲み方を早期に発見し、修正するためのスクリーニングテストに、WHO(世界保健機構)が開発した「AUDIT(オーディット)」があります。テストは10項目からなり、各項目の回答にしたがって点数が付与されています。合計点数により、適度な飲酒、危険・有害な飲酒、アルコール依存症の有無などを判定します。飲酒問題を持つ人を深刻なアルコール依存症に至る前に発見し、飲酒行動を変えるよう働きかけられる非常に有用なテストです。
 アルコール依存症は完全に断酒しないと治りませんが、その一歩手前の状態であれば、適切な支援や努力によって節酒でも治癒が望めます。何度も禁酒しようとしているのにやめられない、お酒が原因で問題が起きている…という人は、なるべく早い段階で一度専門医に相談することをお勧めします。

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