2013年7月9日火曜日
パニック障害
ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 吉住 寿美香 診療部長
パニック障害はどのような病気ですか。
パニック障害とは、突然、理由も無く強い不安に襲われ、動悸(どうき)や震え、目まい、息苦しさといった体の症状も伴う「パニック発作」を繰り返す疾患です。
「今にも死んでしまうのではないか」と思うほどの強い恐怖感を伴うこともあり、救急車で病院を訪れる方もおられますが、数分から一時間くらいで症状は自然におさまります。心臓や呼吸器の疾患ではと心配され内科を受診される方も多いのですが、詳しい検査を受けても異常は指摘されません。けれども何日かしてまた繰り返すのが特徴です。決して珍しい疾患ではなく、100人に1〜2人の割合で発症すると言われています。また比較的女性に多い疾患でもあります。
患者さまにとって大変なのは「また発作が起こるのでは」「起こったらどうしよう」と極度に恐れてしまう「予期不安」です。予期不安が強くなると、パニック発作が起こりそうな状況や、起こった際に逃げ場の無い場所を避けるようになり、学業や仕事といった社会生活に支障が生じたり、家に引きこもりがちになる方もおられます。
パニック障害は決して気持ちの持ちようでどうにかなるものではなく、脳内の不安や恐怖に関与する神経系の‘誤作動’によって起こります。ですから、迷わず専門医の下でしっかりとした治療を受けることが大切です。
パニック障害の治療について教えてください。
治療は大きく二段階に分かれます。第一段階は薬物療法です。発作に有効な薬がありますので、まずはそれを服用しパニック発作を抑えていきます。「薬さえ飲んでおけば発作は出ない」という状態を作ることが出来たら、第二段階の認知行動療法に移ります。これまで不安や恐怖のために制限していた行動を少しずつ再開し、慣れていくのです。症状が出たときの対処法も学びつつ、今まで避けていた状況でも安心できるという自信を積み重ねます。自信が強まっていくにつれ、不安も消えていきます。勇気を必要とする段階ですが治療効果も実証されており、薬物療法との併用で再発率も低いことが分かっています。
数ヶ月ほどで安定してくる人もいれば、何年かかけ少しずつ発作が遠のいていく人もいます。症状は楽になるケースが多いので、病気の内容をよく知り、じっくり治療に取り組む姿勢が大切です。周囲の方にも同様の理解をお願いしたいと思います。
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