2013年1月9日水曜日
多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)
ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長
白内障の眼内レンズについて教えてください。
白内障は瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
日本で使われている眼内レンズの多くが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの1カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転したりする時に眼鏡が必要になります。
多焦点眼内レンズについて教えてください。
多焦点眼内レンズは、遠距離、近距離と2点に焦点が合うように設計されています。単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。多焦点眼内レンズは2007年に厚生省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるには、年齢や個人間の差はありますが、一般に数カ月程度かかるといわれています。また、単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいのですが、自由にピントを変えることができる見え方とは異なります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。
どちらのレンズにするかは、医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになってきました。詳しくは、医師にお尋ねください。
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