2012年9月26日水曜日
ぜんそくの最近の動向
ゲスト/医大前南4条内科 田中 裕士 院長
ぜんそくの最近の動向を教えてください。
気管や気管支に慢性的な炎症が起きて狭くなり、呼吸が苦しくなるぜんそく。子どもに多い病気ですが、近年、高齢者のぜんそくが増えています。高齢者のぜんそくの特徴は、呼吸時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」する「ぜん鳴(めい)」のない場合が多く、よくみられる症状は息切れです。ぜんそく特有の症状がないため、息切れがあってもぜんそくとは思わずに「年のせいだから」と自己判断してしまう人が珍しくありません。高齢者は呼吸機能が弱っており、ぜんそくが重症化しやすいので、早めの対処が肝心です。
子どものぜんそくでは、運動中や運動後にせき込むといった症状が出る「運動誘発性ぜんそく」が増えています。運動時以外に症状はあまり出ないため、治療していない子どもも多いとされています。年を重ねてぜんそくの発作を誘発するケースもあるので、注意が必要です。
近年、ぜんそくの原因の多様化・複雑化があり、治療が混乱している例も見受けられます。同じ薬のままで症状が改善しない場合などは、主治医に伝えて、原因を絞り込む検査や薬の変更を相談されてはいかがでしょう。
ぜんそくの診断、治療について教えてください。
ぜんそくの診断では、ぜん鳴や呼吸困難があるかどうかが重要な判断材料になります。また、問診に加えて肺機能の検査やアレルギー、気管の炎症状態などを調べる検査も行われます。さらに、ぜんそくに似た病気もあるので、鑑別のための検査も必要です。中でも、呼気中の一酸化窒素濃度を調べる検査、気道の過敏さを測定する検査は、初期のぜんそくの発見、診療の難しいぜんそくの診断、ぜんそくの程度や経過を診るのに有効な検査といえます。
現在のぜんそく治療は、気道の炎症を抑えて発作を起こさないようにする薬物療法が中心です。かつては、吸入薬の種類が少なく、副作用が出たら代わりに使える薬がありませんでしたが、近年は吸入薬の種類も増えています。
ぜんそくの患者さんは、症状がない時も気管支の炎症が慢性的に続いています。そのため炎症を改善し、次の発作が起こらないように予防することが重要なのです。「最近、発作が起こらないから」という理由だけで、薬の量を減らしたり、治療を中断したりするのは絶対にやめましょう。
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