2012年6月25日月曜日

現代型不眠


ゲスト/医療法人社団碩心会北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長


現代型不眠とはどのような病気ですか。
 なかなか寝付けない、夜中や早朝に目が覚める、熟睡感が得られない…。何かと忙しい現代社会では、多くのストレスにさらされ不眠に悩む人が少なくありません。従来の不眠の多くは「精神生理性不眠」と呼ばれ、精神的なストレスや身体の痛み・不快感、アルコールの過剰摂取などが原因で、眠りに対する不安や緊張が大きくなり、脳が興奮して眠れなくなるというものです。昨今、日本人の取り巻くさまざまな環境変化に伴い、新しいタイプの「現代型不眠」を患う人が増えています。
 現代型不眠は、夜型のライフスタイルや、夜間にテレビ、パソコン、携帯電話などの明るい光を受けることなどによって、眠りを促すホルモンである「メラトニン」の分泌量が減少し、「体内時計」が乱れることでもたらされる不眠です。人間の体には、約24時間のサイクルに合わせて、意識しなくても決まった周期で体の働きを整える体内時計が備わっていますが、これが乱れ、「夜になったので眠くなる」という規則正しい睡眠と覚醒のリズムに障害が起こっているのです。メラトニンは年齢が上がるほど分泌量が減るため、高齢者ほどリスクが高いといわれています。

現代型不眠の治療について教えてください。
 現代型不眠の原因である体内時計の乱れを整えるためには、「起きる時間を毎日一定にする」「就寝1〜2時間前に、ぬるめのお風呂に入る」「寝酒をやめる」など日々の生活習慣の改善を心掛けることが大切です。生活習慣の改善だけでは不十分で、睡眠や日中の生活に支障が出る場合は、薬物による不眠症治療が必要となります。現在では、従来の鎮静型睡眠薬だけでなく、体内時計に作用するメラトニンの分泌を促進する薬も登場しているので、薬剤選択の幅は広がっています。
 たかが不眠、命には関わらないだろうと侮ってはいけません。不眠や不眠による体調不良を放置すると、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の発症・悪化にも影響を及ぼすことが分かってきています。きっかけは何であっても、不眠はこじらせる前に治療を始めることが大切です。よく眠れないことを一人で悩んでいると、睡眠を過剰に意識し、かえって眠れなくなってしまうこともあります。そうなる前に、早めに医師に相談することをお勧めします。

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