2003年7月2日水曜日

「急増する前立腺がん」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

前立腺がんについて教えてください。

 前立腺は男性の生殖器官の一部で、膀胱(ぼうこう)のほぼ真下にあり、クルミ大で尿道を取り囲んでいます。前立腺がんは、近年、日本において急カーブで患者数が増し、死亡数も増えています。原因は高齢人口の増加が挙げられます。前立腺がんは、9割以上が60歳以上の人で占められている高齢者のがんなのです。また、日本人の食生活が、動物性脂肪、動物性タンパク質の多い欧米型に移行していることも、患者数増加の一因として挙げられます。前立腺がんの大きな特徴として初期の症状はほとんどなく、自覚症状が出たときにはかなり進行していたり、骨などに転移していたりというケースがあります。一方で進行が遅く、薬物治療の効果が高いがんであるという側面もあります。検診などで積極的に検査を受け、早期に発見すれば、いたずらに恐れる必要はありません。

具体的な症状や検査、治療法について教えてください。

 前立腺の疾患としては、良性の前立腺肥大症がよく知られていますが、前立腺がんとはまったく違う疾患です。しかし、排尿回数が増える、下腹部の不快感、尿が出にくい、尿が細い、残尿感があるなどの、初期症状がほとんど同じなため、「前立腺肥大症だろう」と誤った判断をし、受診が遅れてしまう場合があります。50歳を過ぎて排尿に勢いが無いなど変化が出てきたら、前立腺がんの検査を受けることをお勧めします。検査は直腸から前立腺を触診したり、超音波、MRI(磁気共鳴診断装置)などの画像診断が有効ですが、それ以前に血液検査でスクリーニングが可能です。採血し前立腺特異抗原(PSA)を測定し、4.0ng/ml以下は正常で、4.0~10.0 ng/mlだと前立腺がんが疑われます。ただし、この数値は前立腺肥大症でも出る可能性があります。10.0 ng/mlを超えた場合は、前立腺がんの可能性が高くなりますから、前立腺の細胞を採取し、病理検査をする必要があります。この場合は3日ほどの入院が必要になります。治療は進行状態や年齢などによって、薬物、放射線、手術のいずれか、あるいは組み合わせて行います。

人気の投稿

このブログを検索