2015年2月4日水曜日
関節リウマチの治療目標
ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長
関節リウマチの治療について教えてください。
関節リウマチの治療は少し前まで痛みを抑えることが目標でした。しかし、生物学的製剤の登場など治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も目指せるようになりました。現在の関節リウマチ治療は、単に痛みを取ることではなく、関節の炎症を抑え、関節の破壊と機能低下を防ぐこと、そして日常生活を支障なく過ごせることが目標となります。
関節リウマチの新たな治療方針として注目されているのが、「T2T(Treat to Target)=目標を持った治療」です。目標を掲げて治療することは、はっきりした目標を持たないで治療するよりも、その後の効果に差があることが明らかになっています。
実際に治療を受けている患者さんの声を聞かせてください。
日本リウマチ実地医会では、全国9487人の関節リウマチ患者に対し、治療への期待や不安について尋ねたアンケートの結果をヨーロッパリウマチ学会で報告しました。本調査の対象者のうち、3363人が生物学的製剤の投与(A群)を、4535人が抗リウマチ薬の投与(B群)を受けていました。
結果、患者が薬物治療に期待するのは、両群とも「確実な効果」が最も多く、以下「関節破壊進行抑制」、「効果の持続」などが続きました。一方、「薬物療法に失望した経験がある」と答えた患者の割合は、A群がB群の約2倍も多く、「二次無効(半年を過ぎた頃から効果が低下する)」に失望したと回答した割合はB群の2倍以上でした。
治療目標は、両群とも「痛みの緩和・消失」、「生活の質の改善」が共通していましたが、B群では「関節破壊進行抑制」や「手術回避」を目標とする割合がA群より低い結果になりました。
生物学的製剤の優れた効果を経験した患者では、高い期待値に効果が見合わない場合に「失望」を味わうことが多くなる一方、関節破壊進行抑制や改善といったより高い治療目標を掲げている人が多いことが示されました。これに対し、生物学的製剤を使っていない患者にはこれらを現実的な目標と捉えている人が少ない傾向にありました。
こうした意識の違いは、同じように「T2T」に基づく治療を行っても、効果に差を生む原因となる可能性が高く、今後は生物学的製剤を使っていない患者に向けた、情報提供など啓発活動をさらに充実させる必要があると思います。
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