2014年10月22日水曜日

白内障手術の合併症


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の手術について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。安全性の高い手術ですが、それぞれの目によって症状、程度、状況が異なるため、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。
 従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。

白内障の手術で合併症など注意すべき点はありますか。
 最も合併症が起きやすいのは、進行して茶褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、また、水晶体の袋を支えるチン小帯が弱くなっているため、濁りが目の中に落下することもあります。
 重度の合併症としては、数千人に一人というごく珍しい状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースがあります。ただちに硝子体手術を行えば、視力を維持できる可能性が高まります。
 術後、数カ月から数年して、またものが見にくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋の後ろ側が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。外来でできる治療で、視力もすぐに回復します。
 白内障手術では、術前に術後の見え方を予測して、挿入する眼内レンズを決定します。目の軸の長さや角膜のカーブから、適切な屈折度数を得るように、眼内レンズの度数をさまざまな理論式に基づき算出しています。しかし、眼球の形状には個体差があり、術後予想通りの屈折度が得られないことがあります。特に多焦点眼内レンズ、トーリック多焦点眼内レンズは、適切な屈折度や乱視軸がずれると、視機能や乱視矯正効果の低下を生じやすい特性があり、その場合、眼内レンズを再度入れ直す手術やレーザー治療による調整が必要になることもあります。

2014年10月15日水曜日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の薬物療法


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

COPDとはどのような病気ですか。
 COPDは、日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます。以前は肺気腫や慢性気管支炎などと呼ばれ、細い気道(気管支)や肺胞などが障がいをうけ、長期にわたって気管支が細くなる病気の総称です。主な症状は、長引く咳(せき)や痰(たん)、労作時の息切れなどで、徐々に呼吸機能が低下していきます。重症化すると呼吸困難を起こし、日常生活に支障を来たすだけでなく、肺炎や心不全などの合併症で命とりになる場合があります。長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、近年、社会的にも大きな注目を集めています。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。呼吸機能を改善し、咳,痰,息切れなどの症状を緩和し患者さんの生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。喫煙を続ける限り、病気の進行を止めることはできません。まずは、きっぱりとたばこをやめることが重要です。そして、薬物療法により症状を改善しながら、呼吸機能の維持・増進を図っていきます。

COPDの薬物療法について教えてください。
 COPDの治療に用いられる代表的な薬は、狭くなった気管支を広げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」です。霧状または粉末状の薬と息を一緒に吸い込み、気管支や肺に直接薬を届けられる吸入薬が主に用いられます。
 気管支拡張薬には、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)などありますが、近年、強力な気管支拡張作用をもつ新薬が続々と登場し数年前と治療は大きく様変わりしています。LAMAでは以前からあったチオトロピウムに加えグリコピロニウムが、LABAではインダカテロール、ホルモテロールが新たに登場し、従来の薬に比べて、即効性や持続性に優れるなど、増悪の抑制や生活の質の改善に大いに期待が持てます。効果の異なるLAMAとLABAを一つにまとめた合成剤も登場し、その有効性が確認されています。ただし、現時点では合剤は処方期間が2週間までと制限があります。
 COPDは軽症例から重症例までは薬物治療が可能ですが、超重症例になると薬の効果が不十分となります。そのため、早い段階で病気に気付き、適切な治療を開始することが大切です。

2014年10月8日水曜日

うつ病とアルコール問題


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 山本 芳正 診療部長

うつ病とアルコール依存症の関連性に注目が集まっているのはなぜですか。
 うつ病とアルコール依存症の合併は頻度が高く、うつ病の人が悩みや苦しみから逃れるためにお酒を飲み、酒量が増えてアルコール依存症になる場合や、逆にアルコール依存症の人がお酒をたくさん飲むことで、うつ症状を悪化させてしまうケースなどいくつかのパターンに分かれます。うつ病とアルコール依存症が互いに誘発し合い、症状を悪化させることもさまざまな研究で指摘されるようになりました。また、うつ病もアルコール依存症も、それぞれ単独でも自殺のリスクは高いことが知られていますが、併発でさらにリスクが高まることも指摘されています。
 うつ病、アルコール依存症の診療では、それぞれの病気の併存に注意が必要です。この併存を正確に診断することが、治療方針を立てる上で重要になります。

アルコール問題について教えてください。
 2004年度のデータでは、アルコール依存症の疑いのある人は440万人、治療が必要な人は全国で80万人といわれていますが、専門治療を受けている人は、その中の2万人に過ぎません。
 飲酒量を表す単位を「ドリンク」といい、純アルコール換算で10gが1ドリンクです。節度ある適度な飲酒は、男性では2ドリンク以下が1日当たりの適量とされています。2ドリンクは、ビール500ml缶1本に相当します。1日の飲酒量が、6ドリンクを超えると多量飲酒となり、アルコール依存症になるリスクが高まると警告されています。
 健康に害をもたらすようなお酒の飲み方を早期に発見し、修正するためのスクリーニングテストに、WHO(世界保健機構)が開発した「AUDIT(オーディット)」があります。テストは10項目からなり、各項目の回答にしたがって点数が付与されています。合計点数により、適度な飲酒、危険・有害な飲酒、アルコール依存症の有無などを判定します。飲酒問題を持つ人を深刻なアルコール依存症に至る前に発見し、飲酒行動を変えるよう働きかけられる非常に有用なテストです。
 アルコール依存症は完全に断酒しないと治りませんが、その一歩手前の状態であれば、適切な支援や努力によって節酒でも治癒が望めます。何度も禁酒しようとしているのにやめられない、お酒が原因で問題が起きている…という人は、なるべく早い段階で一度専門医に相談することをお勧めします。

2014年10月1日水曜日

区別が紛らわしい足の皮膚病


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

水虫とそれに似た区別しにくい皮膚病を教えてください。
 水虫とは白癬(はくせん)菌というカビの仲間が、足の指の間や足の裏などに感染して起こる皮膚病です。かゆみを伴うことが多く、皮がむけたり水疱(すいほう)ができたりします。水虫かどうかは患部を見ただけでは分からないこともあり、菌の存在を顕微鏡で確認する必要があります。
 水虫と紛らわしい疾患として異汗性(いかんせい)湿疹や掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などがあります。異汗性湿疹は、汗の刺激やアトピー素因が原因で起こると考えられており、足の裏に細かい水疱状の湿疹が生じ、皮がむけたり強いかゆみを伴ったりします。掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿を伴った水疱(無菌性膿疱)を形成し、皮がむけたり亀裂を生じたりします。
 爪から白癬菌が侵入して起こる爪白癬も水虫の一種です。爪が白濁し爪甲が厚くなるのが特徴です。しかしながら激しいスポーツの影響やきつい靴を履き続けるなど、長期にわたる様々な物理的な刺激で爪甲が厚く変形をきたすこともあり、見ただけでは爪白癬の診断は困難です。爪白癬の場合も菌の存在の確認が必要です。
 水虫かどうかの素人判断は危険です。水虫と思い込み、市販薬でこじらせる場合もあります。最初に診断を間違えれば治るものも治りません。市販薬などを使い効果が出なかった場合は違う病気である可能性を考え、専門医を受診することをお勧めします。

イボとうおのめ、たこの違いを教えてください。
 足底に硬く存在し歩行時に痛みを起こす皮膚疾患に、イボ、うおのめ、たこなどがあります。イボは正式には「尋常性疣贅(ゆうぜい)」といい、ウイルスの一種が感染して起こる皮膚病です。うおのめ、たこはそれぞれ「鶏眼(けいがん)」「胼胝(べんち)」と言います。これらは靴が足に合っていない、歩き方が悪いなど、足の裏への過度の圧力が原因となり、角質が皮膚深くに食い込んだり(鶏眼)、厚く盛り上がったり(胼胝)したものです。
 イボは液体窒素による冷凍凝固治療が一般的です。うおのめ、たこはメスなどで硬い部分を削る処置を行います。角質を浸軟させる外用剤を併用することもあります。
 イボ、うおのめ、たこは見た目だけでは区別が難しく、特にイボはウイルス性のため放っておくと知らずに広がるケースもあるので、きちんと診断を受けることが大切です。