2014年6月25日水曜日

関節リウマチの敵と関節エコーの重要性


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチ治療中の生活で何か気を付けることはありますか。
 関節リウマチは診断技術や治療法の進歩で「治る」時代に入りましたが、それでも一度発病したら、長く付き合っていかなければならない病気です。治療が順調で症状が軽くなっても、患者さん自身が病状を正しく知り、関節に負担をかけない動作を意識する、身近な人たちにも症状の辛さを理解してもらうなど、毎日の暮らしの中ではいくつかの注意が必要です。
 どういう生活を心掛ければいいのか。今回は、私が日々の診療から考える「関節リウマチの敵」を紹介します。列記すると、①行事など(お客の接待)/正月、お盆、葬式、法事、結婚式、年賀状、おじぎ ②対人関係/理解のない夫、育児、孫の世話 ③家事/大根洗い・おろし、漬物漬け、魚をおろす、カボチャ切り、イカの皮むき、床拭き、アイロンかけ、裁縫、編み物、じゅうたん掃除 ④労働など/庭仕事、冬囲い、雪かき、畑仕事、引っ越し ⑤レジャー/過度な運動、ボーリング、綱引き、ゴルフ ⑥趣味など/過度の散歩、楽器演奏(ピアノ、琴など)、着物の着付け、旅行、ペットの世話 ⑦環境・体質/低気圧、雨天、寒さ、クーラー、肥満、生理 ⑧精神面/日本人気質、仕事人間、ストレス、弱気 ⑨その他/通院、風邪、バス、看病、付き添い、薬の飲み忘れ、正座などがあげられます。

患者さん自身が病状を正しく知り、「関節リウマチの敵」を避けていくのに有効な画像検査について教えてください。
 レントゲンやMRIでは判断できない炎症や血流の状態をリアルタイム、そして時系列的に診断可能な検査に「関節エコー」があります。
 怪しいと思われる関節に、聴診器のように関節エコーを当てると、炎症を起こしている箇所が、まるでメラメラと燃えているかのように画面に赤く映し出されます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。前述した「関節リウマチの敵」と呼ぶべき行動、考え方などが、いかに病状を悪化させ、手足の関節に炎症を引き起こしているのかも一目で分かります。
 関節エコーには、必要な時に必要な関節を気軽に検査できるという利点のほかに、患者さん自身の目で炎症の状態や病状の推移を確認できるので、病気や治療に対する理解に役立ち、リウマチを鎮めていこうという強い気持ちである「治療心」を高められるというメリットもあるのです。

2014年6月18日水曜日

機能性ディスペプシア


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

機能性ディスペプシアとはどのような病気ですか。
 機能性ディスペプシアとは、慢性的に胃もたれ、食後の膨満感、みぞおちの痛みなど、みぞおちを中心とするおなかの症状が続いているにもかかわらず、血液検査、内視鏡検査などを行っても全身性、代謝性疾患ならびに逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍などの器質的疾患が見当たらない病気です。
 生命に関わる病気ではありませんが、つらい症状により、患者さんの生活の質を大きく低下させてしまいます。日本人の4人に1人は機能性ディスペプシアを持っているという調査結果もあり、決して珍しくはない誰もが罹患(りかん)する可能性のある病気です。
 ストレス・過労などの心理的・社会的要因、胃の中に食べ物を蓄えようとする貯留機能や胃の内容物を十二指腸へ送り出す排出機能の障害、胃が刺激に対して痛みを感じやすくなっている状態(知覚過敏)、ピロリ菌の感染などが原因で症状が起こると考えられています。
 主な症状は「つらいと感じる食後のもたれ感」「食事を開始してすぐに食べ物で胃がいっぱいになり、それ以上食べられなくなる感じ」「みぞおちの痛み」「みぞおちの焼ける感じ」の四つです。

機能性ディスペプシアの診断と治療について教えてください
 診断は、問診により患者さんの生活背景、性格、過去の症状などを診ながら、
内視鏡検査により食道、胃・十二指腸に症状の原因となる器質的疾患がないことを確認して判断されることが一般的です。
 治療は、まずストレスや過労などの原因となっている生活習慣を改める指導が行われます。この病気は心理的・社会的要因が関与するため、生活習慣や食習慣を整えることが必要です。十分な睡眠を取り、適度な運動などでストレスを発散し、規則正しい食生活を心掛けてもらいます。薬物療法としては、患者さんの症状に応じて酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬などが処方されます。それらの薬を服用して効果がなければ、抗不安薬や抗うつ薬、あるいは漢方薬などを併用するケースもあります。
 機能性ディスペプシアの診断や治療は、主治医が患者さんの症状をきちんと把握することから始まります。病院・診療所を受診した際は、自覚症状を主治医にできるだけ詳しく伝えましょう。また、気になることは遠慮せずに相談し、根気よく治療に取り組むことが大切です。

2014年6月11日水曜日

新型うつ病


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 橋本 真一 医師

新型うつ病とはどのような病気ですか。
 近年、産業保健(労働者の健康対策を行う)領域では新型うつ病という言葉をよく耳にします。仕事となると心身の不調を訴えるが、私生活では元気になる新しいタイプのうつ病です。一方、いわゆる大学の学問的立場からは、新型うつ病という病名は正式には存在しないとの指摘もあります。
 従来の典型的なうつ病(メランコリー型うつ病)は、まじめな中高年に多く、過剰に頑張ってオーバーワークとなった結果、心身ともに疲弊し、自分を責める傾向があります。それに対して、新型うつ病は若い人に多く、好きな活動の時は元気ですが、仕事中は不調となり、病気を他者のせいにしがちです。このため「怠けているだけ」「わがまま」などと性格の問題にされやすく、周囲からなかなか病気と理解してもらえません。しかし、本人は職場では本当に体調が悪く、苦しんでいるのです。
 新型うつ病といわれるメンタル不調者が増加しているのには、今の若者たちの置かれている社会的背景が大きく関与しているように感じます。少子化で軋轢(あつれき)の少ない環境で育ったことや、会社では上司が多忙で若手社員を十分に指導する時間を持てない中、少人数の20代、30代の若手社員に仕事の負担が多くかかっていることなどの現代社会の諸相が、うつ病の病像に反映しているのではないかと私は考えています。

新型うつ病の特徴について教えてください。
 新型うつ病の特徴を列記すると、①若い人に多い ②こだわりがあり、負けず嫌いで自己中心的に見える ③自分の好きな活動の時は元気になる ④仕事や勉学になると調子が悪くなる ⑤「うつ」で休むことにあまり抵抗がなく、逆に利用する傾向がある ⑥疲労感や不調感を訴えることが多い ⑦自責の念に乏しく、会社や上司など他人のせいにしがち ⑧不安障害(パニック障害、強迫性障害など)を合併することが多い、などがあります。
 本人への対応は上司、産業医などが連携して行う必要があります。うつ病に対する正しい知識と対処方法が、職場でますます求められるようになっています。働く人やその家族と上司や管理職などの企業側の双方がメンタルヘルスに気を配り、また、企業としてはストレスケアと啓発教育、産業医が機能する体制の整備など支援強化を重視することが大切です。
(※新型うつの特徴については、傳田健三著『若者の「うつ」』からその特徴を抜粋(一部改変)して記載しています)

2014年6月4日水曜日

加齢による目の病気と定期検診の勧め


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

加齢による目の病気について教えてください。
 年齢を重ねるとともに、目の病気に悩まされる人も増えてきます。代表的な病気には、白内障、緑内障、加齢黄斑変性などがあります。糖尿病の人では、糖尿病網膜症が起こる可能性も高くなってきます。こうした病気の多くは、加齢が原因の慢性疾患で、数年から20年程度かけてゆっくり進行していきます。また、目は二つあるため、片方の目が見えにくくなっても、両目で見ていると異常に気付かないケースも多く、症状に気付いた時にはかなり進行している場合が少なくありません。
 白内障は、目の水晶体が白く濁り、目がかすんで見えにくくなる病気です。治療の基本は手術で、濁った水晶体を眼内レンズという人工の透明なレンズに取り替えます。緑内障は、何らかの原因で視神経が傷つき、見える範囲(視野)が狭くなっていく病気です。視野が大きく欠けてから治療を始めると進行を抑えることが難しくなるので早期発見が大切です。
 高齢化に伴い患者さんが増加している加齢黄斑変性は、網膜の中心の黄斑という場所がダメージを受け異常が起こり、物がゆがんで見えたりぼやけたりします。早期であれば、VEGF阻害剤投与、光線力学療法などが効果をあげています。糖尿病網膜症は、血糖の高い状態が長く続くと、網膜の細い血管が損傷され変形したり詰まったりして視力の低下を招きます。糖尿病にかかっている期間が長くなればなるほど発病率が高くなります。

眼科の定期検診について教えてください。
 加齢による目の病気は、早期発見・早期治療が何よりも大切です。視覚障害の有病率が50歳代で増加することを考えれば、40歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に眼科で検診を受けることをお勧めします。
 眼科で受ける主な検査には、視力の状態を確認する「視力検査」、視神経や網膜の状態をみる「眼底検査」、眼球の圧力を測る「眼圧検査」、視野が欠けていないかをみる「視野検査」、眼球の表面や水晶体、硝子体を調べる「細隙(げき)灯顕微鏡検査」などがあります。特に眼底検査では、網膜や視神経の様子から加齢による目の病気の多くが分かります。また、眼圧検査では緑内障、細隙灯顕微鏡検査では角膜や水晶体の病気が見つかる可能性が高くなります。これらの検査を一通り受けておくと安心です。

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