2020年5月27日水曜日

関節リウマチの今

ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 安田 泉 内科副院長

関節リウマチとはどのような病気ですか。
 関節リウマチは、関節に起きた炎症によって腫れや痛みが出る病気です。炎症が続くと骨や軟骨が破壊されて関節の機能低下や変形が進行し、身支度や家事に時間がかかるなど日常生活に支障を来します。
 特徴的な初期症状として、朝起きてしばらくは関節が思うように動かない「朝のこわばり」がみられたり、手や足の関節、特に手の指の第2関節や付け根の関節、足の指の付け根の関節が腫れたり痛んだりします。
 詳しい原因が分かっておらず、完全に治す治療法は確立されていません。現在、日本には70万人から100万人もの患者さんがいるといわれており、決してまれな病気ではありません。男性よりも女性の方が約4倍も多く、発症年齢のピークは30〜50代ですが、60歳以降に発症する方も決して少なくありません。

診断と治療について教えてください。
 かつては「不治の病」とされ、いずれ日常生活が制限されてしまう病気と思われていましたが、この20年間ほどで関節リウマチの診断・治療は格段の進歩をとげ、現在では多くの患者さんが病気の進行を抑え、発症前とほとんど変わらない生活を送ることのできる「寛解(病状がコントロールされている状態)」を目指せるようになっています。
 診断は診療、血液検査、レントゲンやMRI、関節エコーなどの画像検査などによって行います。治療の基本は「抗リウマチ薬(メトトレキサート)」の服用で、それだけでは症状が治まらない場合、関節破壊を防ぐ効果がより強い「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」を使ったり、抗リウマチ薬と組み合わせたりします。発症後、早期に治療を始めた患者さんほど、薬がよく効いて寛解となる可能性が高いことが分かっており、早期診断・治療が非常に大切です。
 関節破壊の進行を抑えるのに大変有効である生物学的製剤、JAK阻害薬ですが、副作用として肺炎や結核などの感染症にかかりやすくなる、薬代が高額で患者さんの経済的負担が大きくなるなどの欠点もあります。最も重要なのは、発症早期に適切な治療を受けること。患者さんの年齢や合併症の有無、生活背景、経済的事情などを総合的に考慮し、一人ひとりに合った薬の選択や組み合わせなどを見極めていきます。
 関節の腫れや痛みが続き、リウマチが疑われるなら、お近くの専門医に相談してください。

2020年5月20日水曜日

関節リウマチと感染症

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 副院長

関節リウマチの治療では、免疫を抑える薬を使うため、感染症にかかりやすくなると聞いたことがありますが、本当でしょうか。
 関節リウマチは、本来は外敵から自分を守ってくれる免疫細胞が誤作動を起こし(免疫の異常)、自分自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の病気です。全身の関節に腫れや痛みが生じ、徐々に軟骨や骨が破壊されていきます。
 この免疫の異常は、病原体に反応できない免疫不全とは異なります。リウマチ治療薬の多くは、過剰な免疫を調整することで症状を抑えたり改善したりします。治療薬には抗リウマチ薬、免疫抑制剤、生物学的製剤、分子標的治療、副腎皮質ステロイドなどがあります。
 古典的な抗リウマチ薬は、免疫を抑える働きがあまり強くないので、感染症リスクは少ないと考えられています。一方、副腎皮質ステロイドは炎症を取り除く作用は強いのですが、感染症リスクが高いため、必要最小限の使用が望まれます。生物学的製剤や分子標的薬は、普通は何でもないような毒性の弱い細菌やウイルスに感染する日和見感染症のほか、結核、帯状疱疹(水ぼうそうウイルス)への注意が必要とされています。
 関節リウマチの活動性が高い(症状が出やすい、重い)ときは、活動性が低い(症状が落ち着いている)ときに比べ、感染症にかかるリスクは高く、関節リウマチに対する必要十分な治療が必要です。感染症にかかることが怖いからといって、治療を中断してしまうとかえって健康を害するおそれがあります。
 感染症にかかってしまった場合は、免疫抑制作用のあるリウマチ治療薬は、感染症に悪い働きをする可能性があるので、一時的にリウマチ治療薬をお休みすることもあります。
 新型コロナウイルスの感染を心配される患者さんも多いようですが、現時点では、関節リウマチの患者さんが新型コロナウイルスに対して特にかかりやすい、あるいは重症化しやすいという報告はありません。また、一部の生物学的製剤や分子標的薬が新型コロナウイルスの予防や治療に有効であるという報告もあるようですが、まだデータが少なく、効果は明らかではありません。
 関節リウマチの患者さんは、必要以上に感染症をおそれることはありません。ただし、もし感染してしまうと、薬剤の服用に注意が必要となりますので、普段から手洗いやうがいの徹底、インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種など、しっかり感染予防対策を行うことが大切です。

2020年5月13日水曜日

緑内障

ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長

緑内障とはどのような病気ですか。
 現在、日本の中途失明原因のトップが緑内障です。眼球内の圧力である眼圧が上昇することで、視神経(乳頭部)が圧迫されて異常をきたし、見えない部分が出てきたり、視野が狭くなったりします。治療しても一度失われた視野が元に戻ることはなく、放っておくと失明につながるおそれがあります。日本人の40歳以上の20人に1人が、また、70歳以上の10人に1人が緑内障であると言われています。
 緑内障はじわじわと見えない部分が広がっていく病気です。片方の目に見えない部分があっても、両目で見ると互いの眼で見えない視野をカバーしてしまうため、失明寸前まで病気に気付かないことも多い病気です。
 緑内障を完全に予防できるような効果的な方法はありません。ただ、緑内障を早期に発見し、治療をきちんと受けて眼圧をしっかり管理できれば、多くの場合は失明にいたることはありません。早期発見と治療の継続が何よりも重要です。

診断と治療について教えてください。
 緑内障は眼圧が高い人だけの病気と思ってしまいがちですが、日本人の緑内障は正常眼圧緑内障のタイプが8割を占めます。視神経が弱いなどの原因で、正常な眼圧でも緑内障を発症してしまうのです。そのため診断には、眼圧検査に加え、視野や視神経の異常が分かる眼底の検査も欠かせません。40歳を過ぎたら一度は眼科に行き、視力、眼圧、視野、眼底の検査を受けることをお勧めします。
 眼圧が異常であっても正常であっても、緑内障の治療は眼圧を下げることです。点眼薬による薬物療法、レーザー治療、手術という主に3つの方法いずれか、または組み合わせで、眼圧を管理し、病気の進行を遅らせます。早期で発見できれば多くの場合、点眼薬のみで不自由なく生活を送ることができます。症状によっては2剤目、3剤目の点眼薬の処方が必要になるケースもあります。点眼治療で十分に眼圧が下がらなかったり、視野障害が進行したりする場合は、レーザー治療や手術を行います。
 外来で受けられるレーザー治療は、一般的には痛みがほとんどないと言われ、点眼治療にみられる目の充血などの副作用がなく、合併症リスクが少ない治療法として注目されています。点眼の回数が多くて大変である、手術を受けるのは怖い、という患者さんには大変有用な治療です。

2020年5月7日木曜日

アスリートの股関節周辺の痛み(グロインペイン症候群)

ゲスト/医療法人社団 二樹会 足立外科・整形外科クリニック 加谷 光規 副院長

アスリートによくみられる股関節周辺の痛みについて教えてください。
 肘や膝、踵など、スポーツにより痛めやすい部位はいくつかありますが、股関節周辺もその一つです。
 股関節周辺の痛みは、グロインペイン症候群とも呼ばれ、特にサッカー界でよく知られる症例です。ボールを蹴るときに脚の付け根の前側が痛くなる、ピッチで走っていると太ももの内側や肛門のまわりがギューッと痛くなるのが典型的な症状です。股関節の前面の大腿直筋あるいは内転筋という筋肉の股関節側の付着部の損傷が、痛みの主な原因だと考えられています。
 病態がさまざまで、診断が難しいケースも多く、なかなか治らない痛みに悩まされる方も少なくありません。これは、痛みの原因が、痛い箇所そのものにあるのではなく、筋肉や関節の柔軟性の低下や不自然な体の動かし方、使い方などによって、身体全体のバランスが崩れて、痛みと機能障害の悪循環が生じ、症状が慢性化してしまっていると考えられます。

股関節周辺の痛みに対する治療について教えてください。
 痛みがある箇所だけを治療するのではなく、全身を診て、正しい姿勢を身に付けたり、股関節付近への負担を減らしたりするなど、痛みの原因となっている根本の部分を治していく必要があります。
 注射療法とリハビリを組み合わせることで、完全に痛みが取れるケースも少なくありません。リハビリでは、筋のマッサージや筋力訓練、上肢から体幹、下肢を効果的に連動させる運動などを行います。患者さんの体の特性・弱点を見極め、それぞれに合った個別の運動メニューを提示し、パフォーマンスをレベルアップしていくためのケアやけがの予防法もアドバイスします。
 病状によっては手術を行う場合もあります。新しい術式として注目されているのが「関節外クリーニング手術」です。1センチ程度の創を2〜3カ所作り、そこから内視鏡を挿入して筋肉と筋肉の癒着や炎症などを取り除き、股関節の痛みを改善する治療法です。入院期間は3日程度で済み、おおむね10日〜2週間で社会復帰が可能です。
 早期に発見・治療できれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を治すことができます。また、スポーツを続けながらの治療も、早期であればあるほど可能なケースが多くなります。

2020年4月22日水曜日

苦痛の少ない内視鏡検査

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡は以前からありましたが、近年は著しく性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気をもよおすことがあるなど、患者さん の負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。
 大腸内視鏡というと、どうしても辛く苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、こちらも器具や技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になってきています。多少の圧迫感はあっても、痛みを抑えて検査を終えることができます。また、鎮痛剤を用いることで、眠っている間に治療が終わるケースもあるようです。

内視鏡検査を受けるべき年齢や頻度について教えてください。
 大腸がんのリスクが高くなる40代以上は、胃がんのリスクが高くなる年代でもあります。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など、大腸や胃の内視鏡検査を苦手とするために、がんなど重篤な病気の発見が遅れてしまう例も少なくありません。がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸、大腸、小腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。そのためには、定期的な検査が重要です。
 それぞれの内視鏡検査を受けるのに適切な時期や間隔は、病歴・経過や家族や近親者の病歴などにより個人差はありますが、基本的には40歳になったら「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。