2018年10月10日水曜日

よくある皮膚のできもの

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長

形成外科でよく扱う皮膚のできものについて教えてください。
 高齢者において必発といっていいほどありふれた皮膚のできものに「脂漏性角化症」があります。老人性イボとも呼ばれ、30代以降の男女にみられる皮膚の老化現象の一種です。皮膚にダメージを与える紫外線や、摩擦刺激などが原因と考えられます。日光を浴びやすい顔、特に頬やこめかみに発生することが多く、短髪の方であれば側頭部など髪の毛の中にも多発します。形状は淡褐色から黒色で、扁平(へんぺい)または半球状に盛り上がり、表面がザラザラしてきます。大きさは1mm程度の小さなものから、5cmを超えるような巨大なものまであります。自然に消えることはなく、加齢とともに増大してきます。洗顔や髭剃(ひげそ)りの際に引っかかり、出血を繰り返したり、かゆみが出てきたりする場合もあります。
 首の周りのイボも頻度の高い病気です。専門的には「アクロコルドン」と呼ばれます。放っておいても健康上問題になることはあまりないのですが、整容的な問題になるケースが多々あります。例えば、首元が広く開いたシャツを着るのを避けるようになったり、首周りを隠すのにスカーフが手放せなくなったりする方や、ネックレスなどのアクセサリーがイボに引っかかってしまい使えなくなる方がいます。
 顔のシミや首のイボが大きく盛り上がり、数が増えると、実年齢よりも老けた印象を与えると悩まれて相談に来られる方も多いです。

どのような治療を行うのですか。
 治療は、炭酸ガスレーザーの照射や電気メスを使った「電気凝固療法」などにより、患部のできものを削り取る場合がほとんどです。できものが皮膚の奥深くに達している場合などは、切除手術を行うこともあります。ただ、皮膚がんなど深刻な病気との鑑別が困難なものも含まれます。必要に応じて病理組織検査を行うなど、慎重に診断を確定させることが大切です。短期間のうちに全身に脂漏性角化症が多発する場合は、胃がんなどの悪性腫瘍を合併しているサインである可能性があるので、特に注意が必要です。
 脂漏性角化症やイボ、粉瘤(ふんりゅう)、ほくろなどの皮膚のできものは、薬では治せませんので、外科的治療が必要となります。整容的な問題にもつながりがちな顔や首のできものの治療は、まず形成外科で診察を受けることをお勧めします。

2018年10月3日水曜日

舌側矯正

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 近年、歯のかみ合わせと全身の健康状態やQOL(生活の質)との関係が、注目されるようになりました。それに並行し、口もとの美しさや歯並びに対する関心が高まり、歯の矯正治療が広く認知されてきました。矯正治療は子どものものと思われがちですが、最近は大人になって行う人も増えています。
 先日、30代の女性から「長年、歯並びの悪さがコンプレックスで矯正治療を考えていますが、装置を表からにするか、裏からにするか迷っている」との相談を受けました。この女性に限らず、歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらにあごの左右のずれを気にする方は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、歯列やあごの骨のずれを治す矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など人前で話をする機会の多い方はそう考えるでしょう。思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、着けていても目立たない舌側矯正を選ぶ方もいます。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。他の人に気付かれることなく治療を行うことができる「見えない矯正治療」といえます。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると、装着時の違和感など劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及しています。
 「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事しづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、治療期間も短くなり、より進化した次世代のブラケットといえます。
 「STb」の登場により、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、矯正歯科に相談してみてください。

2018年9月26日水曜日

認知症の介護

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 西 裕 診療部長

認知症について教えてください。
 認知症は、一旦発達した知能がさまざまな原因により持続的に低下した状態のことを示します。
 認知症の症状は、認知症の種類(アルツハイマー型、血管性、レビー小体型など)や個人によって異なりますが、初期には物忘れ、進行すると易怒性(いどせい・強い怒りを抑えられない症状)、不安感の増大などの精神症状や行動異常が現れることが多いです。妄想に左右された言動が認められることもよくあります。
 ご家族の方に認知症らしき振る舞いが現れたとしても、受診させるのをためらってしまう場合や、また本人が頑として病院に行こうとしないケースが多いです。しかし、受診を先送りにすればするほど生活面での問題が大きくなりがちなので、健康診断的な面を強調するなど、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ、受診を促すのが適切です。

認知症の介護についてアドバイスをお願いします。
 ご家族の方が認知症と診断されたとして、日々の介護が負担となっていくことが予想されます。公的な支援を受けてみてはいかがでしょうか。そのために、まず市町村の福祉課や、地域包括支援センターに相談して、介護保険制度に基づく介護認定の申請をしましょう。要介護度が認定されると、その程度に応じて訪問介護やデイサービス、デイケア、ショートステイといった介護サービスが受けられます。
 訪問介護には、ホームヘルパーが入浴や排泄(せつ)、食事について介助する身体介護と、買い物や調理、洗濯などを行う生活援助があります。デイサービスでは、日帰り介護施設において入浴、食事などのサービスや機能訓練を受けられます。施設の多くは送迎車を用意しているので利用しやすいです。デイケアでは、介護老人保健施設、病院などにおいてリハビリを受けられます。ショートステイでは、短期入所生活介護、療養介護のための施設を利用できます。これらのサービスを受けることは、普段介護を行なっているご家族の負担軽減にもつながります。
 こうしたサービスを受けつつ自宅での介護を続けたとしても、生活の維持が困難となった場合には、施設入所を検討することになります。
 認知症の介護は長期間に及びます。ご家族の中だけで問題を抱え込まず、医師、看護師、福祉関係者などと相談していくことが大切です。

2018年9月12日水曜日

子どもの矯正〜前期治療の必要性と効果〜

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療は、早期から始めてもあまり効果がなく、永久歯が生えそろうまでは行わない方がいいという話を聞きました。本当にそうでしょうか。
 子どもの矯正治療は、永久歯が生えそろう以前の、乳歯と永久歯が混在する時期に行う「前期(早期)治療」と、その後、永久歯が生えそろってから始める「後期治療」に分かれています。後期治療は、大人の矯正治療と同様に、一本一本の歯にブラケットを装着する治療のことです。一方、前期治療は乳歯から永久歯が生えそろうまでの期間に、大人にはない成長の力を利用してあごのバランスを整えたり、歯の生え変わりを誘導したりするものです。上あごと下あごの正しい成長を促し、永久歯がスムーズに生えてくるように土台づくりをすることが目的です。
 成長期にある子どもの矯正治療では、いつ治療を開始すれば最も効果的かは一概には言えません。お子さんによって歯の生え具合やあごの発達具合は違いますので、早く矯正を始めた方がいいケースもあれば、全部の歯が永久歯に生え変わるのを待ってからの方がいいケースもあるからです。年齢が同じだからといって矯正を始める時期や治療の手法が同じとは限らないのです。
 お子さんの矯正治療を始める時期は「永久歯が生えてから」と考えている親御さんもいらっしゃると思いますが、それでは子どもならではのメリットである「あごの成長を利用した治療」のタイミングを逃してしまう場合があります。永久歯が生えそろうのを待つのではなく、気になった時点で矯正歯科にご相談いただき、前期治療が必要かどうかの判定を受けていただくと安心かと思います。
 お子さんの口の状態によっては、前期治療を行うことで、後期治療の際に抜歯をする必要がなくなったり、治療期間が短くなる可能性が高くなります。後期治療そのものがいらなくなるケースも多いです。また、かみ合わせが悪くなるのを予防することが期待でき、あごや顔のゆがみなど将来的なリスクや負担の軽減にもつながります。歯並びが悪いことを気にして、お子さんがコンプレックスを持つ場合もあります。お子さんにとって歯並びやかみ合わせの悪さが心理的な負担になっているのであれば、早めの矯正によってそのマイナス要因を取り除いてあげることも大事でしょう。
 子どもの矯正の開始時期は、矯正歯科でお子さん一人一人の症状や生活背景、心理的側面なども見極めて、慎重に判断する必要があります。十分な検査、診断、説明を受け、どのような処置が最も良いと考えられるか、納得した上で治療を受けてください。

2018年8月29日水曜日

ゲーム障害(前編)

ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 白坂 知信 院長

ゲーム障害について教えてください。
 世界保健機関(WHO)は今年6月、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を新たな疾病として認定、依存症の一つとして国際疾病分類の最新版に加えたと発表しました。
 ゲーム障害は、ゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活よりゲームを優先し、健康を損なうなど問題が起きても続けてしまう特徴があると定義されます。家族や社会、学業、仕事に重大な支障が起き、こうした症状が少なくとも12カ月続いている場合に診断できます。長時間ゲームをする人がすべて病気というわけではありません。分かりやすくいうと、ゲームの時間や頻度を管理できず、生活にいろいろな問題が出てもやめられない状態が続いていること。それが病気かどうかの分かれ目です。朝までゲームに夢中で学校や会社に行けなくなり、家族が取り上げようとすると暴れるなどは代表的な例です。
 社会生活が破綻するゲームへの依存状態は、以前から「ネトゲ廃人」などと呼ばれ、不登校や引きこもりの要因の一つにもなってきました。社会人にとっても、依存の結果、家族間のコミュニケーション不全を引き起こしたり、失職など深刻な事態を招くケースは少なくありませんでした。2013年に厚労省が発表した全国調査では、ゲームを含むネット依存の大人は421万人、中学・高校生は52万人に上っています。
 今回、WHOがゲーム障害を新しい病気と認定したのは、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、ゲーム依存がさらに広がり、世界各国で問題化していることが背景にあります。以前のゲーム依存はパソコンやゲーム機でしたが、今はスマホやタブレットが半分近くを占めます。いつでも、どこでも、気軽に遊べる分、誰もが依存症に陥る恐れがあります。ほかの依存症と異なり、子どもたちが陥りやすいのも厄介な点です。また、時間やお金をかけるほど有利になり、ゲーム中の仲間と協力するうち、家庭や学校、会社よりゲーム内の人間関係を優先させるようになります。スマホやタブレットの手軽さやオンラインゲームのさまざまな仕掛けが、依存性を高めているのです。
 ゲームをすること自体が「悪」なのではありません。ただ、利用し過ぎるとゲーム障害という病気になり得ることを理解し、予防を図ることが欠かせません。後編では、ゲーム障害の治療と予防についてお話しします。