2020年7月8日水曜日

壊死性リンパ節炎

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長

若者にみられる頸部リンパ節の腫れは、どのような病気が考えられますか。
 頚部のリンパ節が腫れる病気には、扁桃炎をはじめとしていくつもありますが、その中に「壊死性リンパ節炎」と呼ばれるものがあります。発見者の名前から「菊池病」ともいわれます。10歳代〜30歳代に発症することが多く、男性より女性にやや多くみられます。これは、のどの痛みなどかぜの症状の後に、頚部のリンパ節が腫れる病気です。リンパ節が数珠状に腫れ、一見してそれと分かります。化膿したときのように赤くはなりませんが、触ると痛いのが特徴です。感冒症状に前後して、38℃台の発熱が1週間位続くことがあります。また、皮膚に発疹が出ることもあります。まれに腋窩(えきか)、そけい部など全身の表在リンパ節が腫れることもあります。
 壊死性リンパ節炎の診断ですが、血液検査では白血球が減少する傾向があり、時に異型リンパ球が出現します。まれに、赤血球や血小板も同時に低下する例もあります。そのほか、炎症反応の上昇や肝機能の異常がみられることもあります。リンパ節の病理所見では、好中球などの炎症細胞の浸潤はみられず、壊死したリンパ球を食い荒らした大型の組織球が認められることより、この病気では体の免疫反応が過剰な状態になっていると考えられます。
 原因としては、かぜ症状から始まることからウイルス感染が疑われています。ヒトヘルペスウイルス6型や8型、EBウイルスなどの関与が示唆されていますが、確定はしていません。膠原病のほか、ダニの刺し傷、トキソプラズマ、猫ひっかき病との関連も報告されています。

壊死性リンパ節炎の治療について教えてください。
 半月〜2カ月程で自然に治癒するので薬は不要です。熱が続いて重篤な場合には、ステロイドを投与します。おおむね予後良好とされていますが、数ヶ月から数年後に再発する例が数%あります。まれに膠原病に進展したり、血球貪食症候群のような病態になったりすることもあるので慎重な経過観察が必要です。
 頸部リンパ節が腫れる病気の中でも特に鑑別に注意が必要なのは、悪性リンパ腫、結核性リンパ節炎、局所のリンパ節腫脹から始まる全身性エリテマトーデス(SLE)などです。確実な診断には、皮膚を切開してのリンパ節生検が必要ですが、実際には症状が重篤でない限り最初から生検することはなかなか難しく、経過をみながら他の病気を除外していくことになります。

2020年7月1日水曜日

胃粘膜下腫瘍

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

 胃粘膜下腫瘍とは胃の粘膜層よりも深い胃壁内(粘膜下層、筋層、漿膜下層など)に発生する病変で、大きくなるにつれて胃の内腔に突出し隆起を形成したり表面にくぼみや潰瘍を形成することもあります。多くは腫瘍性ですが、非腫瘍性の疾患も含まれています。また、病変は良悪性、いずれの場合もあります。
 種類としてはGIST(消化管間質腫瘍の略で、消化管の壁にできる悪性腫瘍の一種です)、リンパ腫、平滑筋細胞由来の腫瘍、神経系腫瘍、脂肪細胞由来の腫瘍、血管内皮細胞由来の腫瘍、内分泌細胞由来の神経内分泌腫瘍などに加え、迷入膵、顆粒細胞腫などがあります。うち、GISTの一部、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、血管肉腫、神経内分泌腫瘍の一部では転移をきたすこともあり、悪性度の高いものもあります。
 症状は腫瘍が小さい場合は無症状で、胃の健診などで偶然発見されることもあります。時に腹痛や不快感を伴う場合がありますが、病変が原因とは限りません。しかし、悪性で腫瘍が大きくなってくると、腫瘍が崩れて出血し、吐血や下血を生じることがあります。さらに、転移をきたせば胃がん同様、様々な症状が認められ、全身衰弱にもなります。
 診断は胃X線や内視鏡検査でなされます。病変の表面に潰瘍などを形成して病変が露出している場合には、病変の一部を採取して病理組織診断が可能ですが、病変が正常粘膜に覆われている場合が多いために胃がんのように容易に診断することが困難です。ときには、粘膜表面を焼灼し、露出してきた粘膜下組織を採取して診断する方法もありますが、必ずしもうまく採取できません。そこで、超音波内視鏡検査で病変の性状を調べることもあります。最近では超音波内視鏡を使って生検を行う方法も開発されています。そのほかには腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などがありますが、画像だけでは正確な組織診断をすることは困難です。
 治療は一般に、大きさが2cm以下の場合には年1回程度の内視鏡検査、超音波内視鏡検査などで定期的な観察を行い、2〜5cmの腫瘍には腹腔鏡補助下(腹部に小さな穴をあけて行う)に局所切除を行い、診断治療を行うことが推奨されています。さらに、大きさが5cm以上の腫瘍では悪性腫瘍である可能性が多いために手術を行うことが原則です。このような症例では、開腹して切除することが勧められています。小さい腫瘍でも経過観察中に大きさや形態に変化が認められた場合には手術の適応となります。病理組織検査で、c-kitやCD34などの遺伝子が陽性の場合にはGISTと診断されます。腫瘍の大きさや核分裂像により悪性度が判定されますが、それにしたがって、術後のフォローの間隔が異なり、悪性度が高い場合には4〜6ヶ月毎の画像検査、低い場合には6ヶ月から1年毎の検査が一般的です。さらに、転移再発をきたした場合には分子標的治療剤を内服し、治療を行います。

2020年6月24日水曜日

思春期のメンタルヘルス

ゲスト/さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

思春期のメンタルヘルスについて教えてください。
 思春期(おおむね10〜18歳の中高生)は、第二次性徴がみられ、心と体が子どもから大人へと変化・成長する時期です。一方で、心と身体のバランスが不安定になりやすく、さまざまな問題が生じやすい時期でもあります。
 情報過多の現代社会では、情報が複雑に操作され、何が正しく何が間違っているのか、大人でも判断が難しい状況です。情報の意味の伝わり方が必ずしも正確なものとはならない場合も多く、まだ心身ともに未熟な子どもにとっては誤解につながることも多いようです。迷いや不安、混乱や絶望など、そうした思いと常に向き合わざるを得ない子どもたちの精神的なストレスは相当なものです。爆発寸前までストレスを抱え込んでいるのに、うまく言葉にすることができなかったり、また、両親に心配を掛けてはいけないという思いから、なかなか自分の気持ちを伝えることが難しかったりします。

思春期の心の病気への対応について教えてください。
 思春期の問題行動としては、不登校が最も多く、引きこもりや自傷行為、自殺、性的非行などが挙げられます。一過性であることも多いのですが、その裏に精神疾患が隠れている場合もあります。近年、増加傾向にある不登校は、環境不適応などさまざまな要因で起こります。対人関係の困難、学習困難、いじめなどに起因したものや、発達障害を背景に持つものもみられます。解決、対応方法に一般論はありません。しかし、時間をかければ必ず改善、解決の糸口を見い出すことができます。
 心の病気は、脳の機能不全によって発生するものがほとんどです。つまり、誰にでも起こり得る、ごく普通の病気なのです。例えば、うつ病は風邪のようにありふれた病気であるという意味合いで、「心の風邪」という別名があるほどです。
 心の病気は治療が遅れるほどに、生活への障害が大きくなる傾向がある病気です。また思春期に始まった心の病気は、成人期まで続いたり、再発したりするケースが多いので、一層早期発見・早期治療が重要となります。
 子どもの日々の様子から、おかしな変化を感じられるようになったら、それは子どもが発している「SOS」の信号なのかもしれません。過剰に悲観的にならず、また自分たちだけで解決しようとせず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2020年6月17日水曜日

口呼吸と鼻呼吸

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎 院長

口呼吸が健康に良くないと聞きましたが、どういうことなのでしょうか。
 近ごろ、お口をポカンと開けているお子さんや若者が増えています。そのほとんどは、口で呼吸をしている「口呼吸」の人です。
 ヒトは1日に約1万リットル分の空気を吸い、そのほとんどを吐き出しますが、本来、人間は構造上、鼻で呼吸をするようにできています。口呼吸は、スポーツをする時やカゼで鼻がつまったりした時、鼻呼吸を補う補助的な呼吸です。呼吸を鼻でするか、口でするか、同じようですが、その意味は大きく異なります。
 鼻呼吸では鼻の繊毛や粘液でウイルスや汚染物質の侵入を防ぎます。また、冷たく乾いた空気を吸い込んでも、鼻の中に張り巡らされた毛細血管によって、喉の奥では体温近くまで温度が上昇し、湿度も上がります。このため、乾燥に強く湿気に弱いウイルスの生存率が低下します。
 一方、口呼吸では、そうした鼻が持つ防御機能は発揮されません。口から息を吸うと、冷たい外気のまま肺に届き、肺の免疫力が低下し、肺にかかる負担が増えてウイルスに感染しやすくなります。また、口呼吸で口の中が乾燥すると口の中や喉の奥にいる細菌が増殖し、口臭や虫歯、歯周病に感染するリスクが高まります。最近の研究では、口呼吸を続けていると、歯や口元の変形、顔面や身体のゆがみ、ドライマウス・アイ、いびきなどさまざまな身体の不調の要因になりうるとされています。

診断や治療について教えてください。
 鼻呼吸がうまくできず、口呼吸に なっているかどうかは、お口を閉じた状態で、舌が低い位置にあり、上あごとの間に隙間があいていると口呼吸が疑われます。また鼻呼吸はゆっくりと深い呼吸ですが、口呼吸は、浅く早い呼吸となります。自分では気付かないうちに、口呼吸になっているケースも多いので、かかりつけ歯科医に一度相談してみるといいでしょう。症状に応じて、適切な検査、治療をおこなっていきます。
 ご家庭でも簡単にできるのが、口呼吸の改善につながる「あいうべー体操」です。「あー」「いー」「うー」「べー」と発声するつもりで口を大きく動かします。「うー」ではタコのように唇を突き出し、「ベー」では口から思い切り舌を出しましょう。1日30セットやれば、舌や口のまわりの筋肉を強化することができ、年齢を問わず、鼻呼吸となりカゼ の予防や免疫力の向上など、健康増進に繋がります。

2020年6月10日水曜日

新型コロナウイルス対策による肌トラブル

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

マスクの長時間着用による肌トラブルについて教えてください。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクを着用する機会が増える中、マスクが擦れて口元にかゆみや痛みを生じたり、マスクの内側が蒸れてニキビが悪化したりするなどの症状を訴える人が増えています。
 マスクの長時間着用は少なからず肌に負担をかけます。不織布は意外と硬いので、肌に摩擦を起こしやすく、その刺激は肌のバリア機能を低下させ、肌の乾燥や湿疹、皮膚炎の原因になります。また、マスクの内側は呼気によって湿度が高くなります。マスクの中が蒸れると、雑菌が繁殖しやすく、口まわりのニキビの発症・悪化の原因になります。
 対策としては、自宅など安心できる場所・場面では意識してマスクを外す時間を作りましょう。また、できるだけ摩擦を起こさないよう自分に合うサイズのマスク、肌あたりのやわらかいマスクを選ぶことが大切です。マスクの内側にガーゼなどのやわらかい布を挟むのも一手です。
 口まわりに汗をかいた時はこまめに拭き取る習慣を付け、洗顔やクレンジング時にはできるだけ刺激を避けるなど、いつも以上にやさしいスキンケアを心掛けましょう。清潔な肌を保ちながら、化粧水で水分を補い、乳液やクリームでしっかりと保湿ケアを行って、肌のバリア機能を守ってください。

―頻繁な手洗い、消毒液による肌トラブルについて教えてください。
 こまめな手洗いや消毒液の使用が励行される中、手のひらや手の甲、指のかさつきやひび割れ、かゆみ、赤み、痛みといった手荒れに悩まされる患者さんも増えています。頻繁な手洗いで、手指の皮膚のバリア機能を担う皮脂が流れ落ち、水分が保ちにくくなることに加え、消毒液の殺菌成分が刺激となって症状を悪化させているケースが多いです。
 高温のお湯は皮脂を取る力が強いので、ぬるま湯や水での手洗いをお勧めします。また、ぬれたままにしておくと皮膚がかえって荒れやすくなるので、ぬれた手はハンカチやハンドタオルできちんと拭くことも大切です。肌の弱い人は、低刺激性の石けんや消毒液を選んだ方がいいでしょう。手荒れがあまりにもひどい時は、十分な水洗いだけでも構いません。手洗い、消毒のあとは、水分をよく拭き取ってからハンドクリームを塗ってください。流れ落ちた皮脂の代わりにバリアの役割を果たしてくれます。
 セルフケアを実践しても、口元や手指の症状が治らない時は、症状がさらに悪化する前に専門医を受診してください。