2019年5月15日水曜日

かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

かくれ脳梗塞とはどのような病気ですか。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「かくれ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞といいます)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査結果を伝える際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合も多く、われわれ医療従事者も気を付けなくてはならないところです。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。

かくれ脳梗塞が見つかった場合、どう対応すればいいのですか。
 無症候性脳梗塞と診断された場合、差し迫った危険はないとはいえ、何も手を打たずに放っておいていいわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また、非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり、自分が他の人より脳梗塞など脳の病気を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に積極的に取り組むことが大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックです。脳梗塞の発症に一番関係が深いのが「高血圧」の存在です。高血圧があれば、その後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術を勧める場合もあります。

2019年5月8日水曜日

双極性障害(そううつ病

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

双極性障害とはどのような病気ですか。
 双極性障害は、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂うつな「抑うつ状態」と、うつ状態とは逆に気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制がきかなくなりがちな「そう状態」を繰り返す病気です。およそ100人に1〜1.5人の割合でかかる可能性があります。
 そう状態では、症状が軽い場合、睡眠時間が短く多弁となり、意欲が増し、アイデアが次々浮かんできたりすることから、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気そうだな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、過大な消費を続けたり、攻撃的な言動で周囲の人とトラブルになったり誇大妄想に影響されて無謀な行動をしたり、興奮状態を呈する場合もあります。
 また、そう状態からうつ状態に転じます。うつ状態では、重症化すると自殺の危険性が高まり、一般の方と比べ、約15倍も自殺のリスクが高くなると指摘されています。
 お酒や薬物に依存する「物質使用障害」、パニック障害などの「不安障害」など、ほかの精神障害を併発するケースが多いのも特徴の一つです。

診断と治療について教えてください。
 双極性障害は、初めにうつ状態を呈することが多いです。双極性障害のうつ状態とうつ病は症状が似ているため、見分けがつきにくく、診断が難しいです。なかなか治らないうつ病と思っていたら、実は双極性障害だったというケースも少なくありません。双極性障害とうつ病は治療方針も治療に用いる薬も異なるため、この2つの病気をしっかりと鑑別することが重要です。
 治療は薬物療法が有効です。うつ病では主に抗うつ薬が処方されますが、双極性障害では気分安定薬を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることが治療の目標となります。近年、双極性障害に効果の高い新しい薬も登場しており、治療の選択肢は広がっています。
 治療せず放置していると、重症化したり、再発を繰り返したりします。本人が気づきにくい病気なので、周囲が「今までと様子が違う」ことに気づいたら、いち早く医療機関につなげることが大切です。継続的な治療が必要な病気ですが、元気に回復した人や症状をコントロールしながら普通に日常生活を送っている人もたくさんいます。

2019年4月24日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度歯科医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに歯科医に相談することをお勧めします。

2019年4月17日水曜日

鼻から入れる内視鏡(経鼻内視鏡検査)

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

鼻から入れる内視鏡について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることが増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年は性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に吐き気をもよおすことがあるなど、患者さんの負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では、鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。

経鼻内視鏡検査の流れを教えてください。
 最初に鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の疾患がある場合などは、経鼻内視鏡が使えないこともあります。
 前処置として、鼻腔に「局所血管収縮剤」をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。続いて、鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、喉、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など経口内視鏡を苦手とするあまりに受診が遅れ、症状が進行していることもあります。経鼻内視鏡は患者さんの体への負担が少ないので、内視鏡検査をちゅうちょしている人は1日も早く医師に相談してほしいと思います。

2019年4月10日水曜日

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

非アルコール性脂肪肝炎とはどのような病気ですか。
 肝臓の細胞に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。お酒の飲み過ぎによって引き起こされるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、お酒を飲まない場合でも脂肪肝になることがあり、これを非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD=ナッフルディー)といいます。肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病を伴うことが多く、メタボリックシンドロームの肝病変と考えられています。NAFLDにはほとんど病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL=ナッフル)と、炎症や繊維化を伴い、肝炎から肝硬変、さらには肝がんに進行する危険性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」があります。飲酒歴がなくても脂肪肝の人で肝臓の病気が進行してしまうことがあるということです。
 肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません。NASHになっていても、かなり病気が進行しない限りほとんど症状はありません。脂肪肝を治療せずに放っておくと、知らない間に肝硬変や肝がんまで進行してしまう場合があることを知っておいてほしいです。

診断と治療について教えてください。
 脂肪肝は自覚症状がほとんどないか、あっても倦怠感がある程度です。一般的な血液検査だけで診断することは難しく、超音波検査やCTによる検査で肝臓への脂肪沈着を確認します。NASHと診断するためには肝生検を行う必要がありますが、簡単に行える検査ではありませんし、多少のリスクもあります。そこで肝臓の線維化に着目して肝機能(GOT、GPT)や血小板数、年齢などから予測式(FIB-4 index)を用いて肝生検を行うべきかどうかの目安にします。電卓があればご自分でも計算できますが、データを入力すると結果を出してくれるホームページもあります。
 治療は、多くの場合肥満を伴っていますので、NAFLでは食事療法や運動療法など生活習慣の改善による減量が基本となります。NASHの場合も肥満のある場合は減量が大切で、糖尿病、脂質異常症、高血圧症がある場合にはそれらの治療も重要となります。こうした疾患に対する薬剤のなかにはNASHに対しても効果があると示唆されているものもあります。保険適用の問題はありますが、抗酸化作用があるビタミンEなども使われることがあります。肝障害の進行を防ぐため、初期の段階から積極的に治療を行なっていきます。
 特定健診など、健康診断で肥満と多少なりとも肝機能異常を認める場合には、症状がなくても専門医に相談してほしいと思います。