2018年11月14日水曜日

胃がん検診と胃がんのリスク判定

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

胃がん検診について教えてください。
 厚労省のがん検診に関する国の指針が平成28年に改定されたのを受け、市町村の胃がん検診が変わります。すでに開始となっている市町村もありますが、札幌市の場合は来年、平成31年1月から対象年齢・検診の内容・受診間隔が変更されます。対象年齢が40歳以上から50歳以上になり、検査内容はバリウム検査に加え、内視鏡検査も選べるようになります。検査の間隔は「毎年」から「2年に1回」となります。
 バリウム検査は費用が安く、検査時間が短いなど優れた検査法ですが、食道の病変や平坦な病変を見つけにくいという弱点がありました。異常が疑われる場合には内視鏡検査が必要になり、二度手間ともいえます。一方、内視鏡検査はバリウム検査に比べて肉体的・精神的苦痛を伴うイメージを持つ患者さんが多いですが、食道の観察も行えますし、粘膜のわずかな異常や色調の変化などを観察できます。早期の病変の発見には、内視鏡検査の方が優れているといえます。また、内視鏡検査ではがんが疑われる病変があれば、その組織を一部採取(生検)して確定診断したり、胃炎所見があるときにはヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染診断を行うこともできます。
 胃がん検診の変更に伴い、40歳の方を対象に、胃がんになりやすいかどうかを判定する検査(胃がんのリスク判定)も新たに導入されました。

胃がんのリスク判定について教えてください。
 ピロリ菌の感染が胃がんの原因となることが明らかとなって時が経ちました。感染により胃粘膜に障害を起こし萎縮性胃炎となり、萎縮した粘膜から胃がんが発生すると考えられています。そこで、血液検査によりピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮の程度を測定し、その両方を組み合わせて胃がんのリスクが高いかどうかを判定します。
 判定結果はA、B、C、Dの4群に分けられます。ピロリ菌の感染がなく、萎縮のない粘膜はA群で、がんのリスクは低いと考えられます。感染があり萎縮のないB群、感染があり萎縮のあるC群、感染がなく萎縮のあるD群の順でリスクが高くなります。リスクの高いB~D群の方は、内視鏡検査を受けることが勧められます。
 札幌市では来年1月から、満40歳になる人を対象に一生に1回だけこの検査を受けることができるようになります(平成33年3月までは経過措置として42・44・46・48歳の方も受けられます)。いくつかの条件がありますが、対象となる方はぜひ制度を利用して受診し、胃がんの予防と早期発見につなげていただきたいと思います。

2018年11月12日月曜日

強迫性障害

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

強迫性障害とはどのような病気ですか。
 「自分や周囲のものを汚く感じ、手洗いを繰り返し、触れなくなる」「ドアの鍵やガスの元栓を閉めたかどうか気になり、何回も確認する」。このように、不合理だと分かっていても、自分ではコントロールできない不安や不快感の原因となる考え(強迫観念)が頭に浮かび、それを振り払おうとしてさまざまな行為(強迫行為)を何度も繰り返してしまう病気が強迫性障害です。繰り返すことで症状が悪化していくのも大きな特徴です。
 症状が比較的軽いうちは、なんとか日常生活を送ることができますが、重症化すると、強迫行為に大半の時間を取られて他のことをする余裕がなくなったり、行けない場所が増えたりするなど、日常生活に支障を来たし、引きこもりになることもあります。また、本人が家族にも度を越えた清掃や確認を要求するなど、周囲の人も症状に巻き込まれてしまうケースもあります。
 強迫性障害の有病率は人口の2〜3%程度といわれ、幅広い年代で発症します。発症のメカニズムはまだはっきりと解明されていませんが、遺伝的な要因との関わりが示唆されています。うつ病やパニック障害など他の精神障害を同時に合併している場合も少なくありません。

治療について教えてください。
 治療には大きく分けて、薬物療法と認知行動療法があります。
 薬物療法で主に使われるのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬です。服用を始めると、約半数の人に症状が軽減するなどの反応が出てきます。薬物療法で効果がない場合は、認知行動療法の一種である「暴露反応妨害法」を用います。これは、まず強迫性障害がどういう病気なのかをきちんと理解してもらう心理教育から始めます。次に、あえて強迫観念を招くような場面に患者さんを立ち向かわせ、強迫行為をしなくても不安感が小さくなっていくことを学んでもらいます。最初の段階では患者さんは強い不安を覚えますが、段階を踏んで行っていけば、強迫行為をしなくても不安がなくなることを実感できるようになります。
 最後に、強迫性障害はきちんと治療すれば改善する可能性の高い病気です。思い当たる点がある人は、一度、専門医を受診してアドバイスを受けることをお勧めします。

2018年10月24日水曜日

最新の糖尿病治療

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データによる結果では、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患を合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。
 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2018年10月17日水曜日

お酒で赤くなる人は、食道がんに要注意

ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

どのような人が食道がんになりやすいのですか。
 日本人の食道がんは、飲酒と喫煙が大きな原因です。飲酒については「昔は飲むとすぐに赤くなったけれど、鍛えられて強くなった」という人が特に要注意です。
 飲酒で顔が赤くなる人のことを「フラッシャー」と呼びます。お酒の成分のエタノールは、体内で分解され、アセトアルデヒドという有害物質に変化し、これがさらに分解されて無害な酢酸になります。アセトアルデヒドは顔の赤らみや頭痛、二日酔いの原因であることに加え、発がん物質でもあります。
 アセトアルデヒドを分解する酵素には、遺伝的に3つの型があります。日本人の50〜60%は強い酵素を持っており、この人たちはお酒に強く赤くなりません。5〜10%は酵素活性がなく、お酒がほとんど飲めない人たちです。残りの30〜45%が、酵素の働きが弱く、少し飲めるけれど赤くなるフラッシャーの人です。
 フラッシャーは、アセトアルデヒドの分解が遅く、体内に発がん物質のとどまる時間が長くなるため、がんのリスクが高いとされます。また、フラッシャーであったのに、飲み続けることで「お酒に強く」なり、さらに過度の飲酒を続けていると、食道がんの発症率が何十倍も高くなることがわかっています。
 欧米で頻度が高いのは逆流性食道炎に起因する食道がんです。日本ではこのタイプの食道がんは少ないのですが、生活習慣の欧米化などにより今後増加してくることも予想されます。

食道がんの診断や治療について教えてください。
 無症状の早期がんは、集団検診のバリウム検査で見つけられることはあまりありません。内視鏡検査であれば、早期発見が可能です。早期食道がんは、内視鏡を用いた切除で体に大きな負担をかけずに、比較的短期間で治療することができます。
 食道がんは進行してくると、のどの違和感や飲み込む時のつかえ感などの症状が出てきます。進行がんでは内視鏡による治療はできず、手術・抗がん剤・放射線を組み合わせて治療します。日々治療法は進歩していますが、依然としてこれらの治療による体の負担は大きく、治療が難しいがんといえます。
 食道がんにならないためにフラッシャーの人は過度の飲酒を控えてください。また、早期発見のためには、長年飲酒を続けている人は症状がなくても定期的な内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2018年10月10日水曜日

よくある皮膚のできもの

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長

形成外科でよく扱う皮膚のできものについて教えてください。
 高齢者において必発といっていいほどありふれた皮膚のできものに「脂漏性角化症」があります。老人性イボとも呼ばれ、30代以降の男女にみられる皮膚の老化現象の一種です。皮膚にダメージを与える紫外線や、摩擦刺激などが原因と考えられます。日光を浴びやすい顔、特に頬やこめかみに発生することが多く、短髪の方であれば側頭部など髪の毛の中にも多発します。形状は淡褐色から黒色で、扁平(へんぺい)または半球状に盛り上がり、表面がザラザラしてきます。大きさは1mm程度の小さなものから、5cmを超えるような巨大なものまであります。自然に消えることはなく、加齢とともに増大してきます。洗顔や髭剃(ひげそ)りの際に引っかかり、出血を繰り返したり、かゆみが出てきたりする場合もあります。
 首の周りのイボも頻度の高い病気です。専門的には「アクロコルドン」と呼ばれます。放っておいても健康上問題になることはあまりないのですが、整容的な問題になるケースが多々あります。例えば、首元が広く開いたシャツを着るのを避けるようになったり、首周りを隠すのにスカーフが手放せなくなったりする方や、ネックレスなどのアクセサリーがイボに引っかかってしまい使えなくなる方がいます。
 顔のシミや首のイボが大きく盛り上がり、数が増えると、実年齢よりも老けた印象を与えると悩まれて相談に来られる方も多いです。

どのような治療を行うのですか。
 治療は、炭酸ガスレーザーの照射や電気メスを使った「電気凝固療法」などにより、患部のできものを削り取る場合がほとんどです。できものが皮膚の奥深くに達している場合などは、切除手術を行うこともあります。ただ、皮膚がんなど深刻な病気との鑑別が困難なものも含まれます。必要に応じて病理組織検査を行うなど、慎重に診断を確定させることが大切です。短期間のうちに全身に脂漏性角化症が多発する場合は、胃がんなどの悪性腫瘍を合併しているサインである可能性があるので、特に注意が必要です。
 脂漏性角化症やイボ、粉瘤(ふんりゅう)、ほくろなどの皮膚のできものは、薬では治せませんので、外科的治療が必要となります。整容的な問題にもつながりがちな顔や首のできものの治療は、まず形成外科で診察を受けることをお勧めします。