2018年7月4日水曜日

双極性感情障害

ゲスト/医療法人五風会 福住メンタルクリニック 宇佐見 誠 院長

双極性感情障害とはどのような病気ですか。
 双極性感情障害とは、かつて「そううつ病」と呼ばれた病態とほぼ同じです。うつ病のように、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂うつな「うつ状態」が続くだけなく、うつ状態とは逆に、気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制がきかなくなりがちな「そう状態」にもなります。多くの場合、うつ状態とそう状態が交互に出現し、これらが数週間、数カ月続きます。
 うつ状態のときは、何をするのも億劫(おっくう)で集中力がなく、悲観的になりやすいです。睡眠が十分に取れなかったり、食欲もなく疲れやすくなったりもします。また、そう状態のときは、いわば空元気で、気が大きくなり浪費したり、普段にない高飛車な物言いで周囲の人とのトラブルになったりする場合もあります。ちょっとしたことでイライラして怒りっぽくなる人もいます。
 病気の原因はまだ十分に解明されていませんが、双極性感情障害と診断される人は、近親者の中にも同じ病気になっている人が多く、遺伝が強く関係するとされています。

診断や治療について教えてください。
 双極性感情障害は初めに症状が出現するときはうつ状態を呈することが多く、発症時はうつ病なのか双極性感情障害なのかわからない場合も多々あります。経過中に明らかなそう状態が出現して初めて双極性感情障害という診断になりますが、そう状態の症状が軽いときは、自分では本来の調子の良さと誤解してしまいがちですし、周囲も気付きにくいです。なかなか治らないうつ病と思っていたら、実は双極性感情障害だったというケースも多いです。
 うつ病と双極性感情障害では治療がまったく異なるので、専門医による鑑別診断は非常に重要です。双極性感情障害の治療の柱となるのは薬物療法です。気分の変動を改善・予防する気分安定剤を用いて、うつ状態とそう状態の波をうまくコントロールすることが目標となります。
 継続的な治療が重要な病気ですが、元気に回復した人や、症状や気分をコントロールしながら普通の人と変わらない日常生活を送っている人もたくさんいます。「どこか調子がおかしいな」「今までと様子が違う」など、気になる症状がある人や、周囲が患者さんの不調に気付いた場合は、ためらわず近くの精神科・心療内科を受診してみてください。

2018年6月27日水曜日

白内障手術の合併症

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の手術について教えてください。
 一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠くと近くの2カ所に焦点が合う多焦点眼内レンズや、従来の多焦点眼内レンズの弱点である夜間に光がにじんで見えたり、まぶしく見えたりする現象などを解消したレンズも使われています。これらは健康保険が適用されませんが、先進医療に該当するため、民間生命保険の先進医療特約の対象となることがあります。そのほか、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う三焦点眼内レンズなど、自由診療も含めて眼内レンズの選択肢は広がっており、患者のニーズに合ったものを選ぶことが可能です。

白内障の手術で合併症など注意すべき点はありますか。
 日本白内障学会などによると、白内障手術は全国で年間140万件以上行われており、最も実施件数の多い外科手術の一つです。患者への身体的な負担も少なく、基本的に安全性の高い治療法ですが、合併症の可能性はゼロではありません。
 最も合併症が起きやすいのは、進行して褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、また、水晶体の袋を支えるチン小帯が弱くなっているので、濁りが目の奥に落下することもあり、慎重な施術が要求されます。通常の症例に比べると手術時間が長くかかります。
 眼内レンズを支える膜が何らかの原因で手術中に破れることもあります。これを破嚢(はのう)といいます。大きな破嚢は、眼内レンズを挿入できないケースもあり、この場合には後日眼内レンズを目の中に縫い付ける方法で挿入します。
 重度の合併症としては、約4000人に1人というごくまれな状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースがあります。直ちに硝子体手術を行えば、視力を維持できる可能性が高まります。
 術後、数カ月から数年してまた物が見えにくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋が濁ってくるのが原因です。再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に取り除くことができます。外来でできる治療で、視力も翌日には回復します。

2018年6月20日水曜日

高齢者のめまい

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

高齢者のめまいについて教えてください。
 「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「立ち上がったら目の前が暗くなった」など「めまい」に悩む高齢者は少なくありません。年齢とともにめまいは起こりやすくなりますが、いくつも原因が考えられ、背後に恐ろしい病気が潜んでいる場合もあるため、「年のせいだから仕方ない」と軽く見てはいけません。
 頻度が高いものは内耳障害によるめまいですが、脳の障害によって起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに舌のもつれや手足の脱力、しびれが出ているようであれば脳の障害が疑われます。脳の障害によるめまいは極力早く診断し治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる画像診断が有用です。

高齢者のめまいは、ほかにどんな特徴がありますか。
 加齢に伴って平衡感覚の衰えや、血圧を調整する能力の衰えが進むため、高齢者はめまいを起こしやすくなります。また、糖尿病や高血圧などの持病を抱えている人は服用する薬が多くなり、その副作用などからめまいを起こすこともあります。そのほか、もともと耳鳴りがあったり、以前から難聴があったりするケースもあり、複数の原因が重なっていることも多いです。このため、高齢者のめまいは原因を簡単に明らかにできないこともあります。
  「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がる時に血圧が急激に低下する病態をいいます。若い人は起立性低血圧により顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者では若い人のような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすくなっているため、やはり立ち上がる際には注意が必要です。
 暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくいので脱水が生じやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えてしまうと脱水を起こしやすくなってしまうので、入浴前後や就寝前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。

2018年6月13日水曜日

職場のメンタルヘルス

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

職場のメンタルヘルスの現状について教えてください。
 現在、日本の就業人口は約6500万人といわれています。個人差はありますが、その大多数がストレスや悩み、不安などを感じながら仕事に従事しているのが現状です。ある調査では、約60%の労働者が「自分の仕事に不安、悩みがある」など心にストレスを感じていると報告されています。これらは職場内の人間関係や仕事の質、量、適性などによる原因のほか、昇進や異動、定年後の不安といった環境の変化に起因するところも大きいと考えられています。
 ストレスはさまざまなメンタルヘルス不調の原因となりますが、その中で最も頻度の高いものが「うつ病」です。うつ病は決して「メンタルの弱い人がかかる病気」ではなく、ストレスなどを誘因とした脳内化学伝達物質のアンバランスによって生じる「脳の病気」です。また、「生涯にうつ病を経験する人は14人に1人いる」という報告もあり、うつ病は誰でもかかる可能性があり、決して稀な病気ではないということを、本人のみならず職場の同僚、上司も理解しておく必要があります。

職場のメンタルヘルス対策について教えてください。
 近年、職場のメンタルヘルス対策は重要視されており、それらに携わる産業保健スタッフ(産業医、保健師、看護師、カウンセラーなど)を配置する職場も多くなってきました。また、主に管理職を対象としたメンタルヘルス研修会を開催している職場も増加しています。また、2016年度から厚労省は職場のメンタルヘルス不調者の早期発見・介入のため、「ストレスチェック制度」を導入しました。これは「ストレス状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを軽減させる」一次予防と、「リスクの高い労働者を発見し、医師による面接指導につなげる」二次予防を目的としたものです。具体的には「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」など計57項目からなるストレス評価尺度です。
 16年度、道内で精神障害による労災認定を受けた人はこれまでで最も多く、前年度に比べ2倍近くに増加しました。今後もこの傾向は続くものと予想されます。職場のメンタルヘルスに関して心配事があれば、まずは職場内の産業保健スタッフに相談すること、そして、必要があれば精神科・心療内科を受診することをお勧めします。

2018年6月6日水曜日

マダニ感染症

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

マダニ感染症について教えてください。
 登山やキャンプなど外での楽しみが増える時期、特に気を付けたいのは、マダニにかまれることで発症する感染症です。
 一般に見られるマダニは、アレルギーの原因になる小さくて目に見えないイエダニとは別の生物で、体長は3~4ミリで硬い外皮に覆われています。野山や沢に沿った斜面、牧草地などに生息していますが、山に入らなくても道路脇や草やぶなどにいることもあり、道内であればどこにいてもおかしくありません。
 マダニは、ウイルスや細菌を媒介する危険があり、道内では昨夏、マダニにかまれた男性が「ダニ媒介性脳炎」を発症し死亡しました。厚労省などによると、マダニにかまれてダニ媒介性脳炎に感染する患者は世界で年間6千人に及び、発症した場合の致死率は1〜20%にも上ります。人の潜伏期間は1、2週間ほどで、ウイルスの型によっては頭痛、嘔吐(おうと)がみられ、重症の場合は死に至ります。有効な治療法はまだ見つかっていません。
 ほかにも、マダニを媒介した感染症には皮膚が赤くなり、発熱や関節痛などインフルエンザと似た症状が出る「ライム病」、発熱を繰り返し髄膜炎などを引き起こす「回帰熱」などがあります。

対処法と予防法について教えてください。
 かまれないための対策が重要ですが、もしかまれた場合には、自分でマダニを皮膚から引きはがさないことです。マダニの口器は、釣り針のように皮膚内部に強く食い込みます。無理やり取ると口や頭部が残ってしまうことが多いので、医療機関での処置が推奨されます。その後も数週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たらすぐに診察を受けてください。
 森林などに入る時には、長袖、長ズボンを着用し、なるべく肌を露出しないこと。首にはタオルを巻き、シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は長靴の中に入れるなど、首回りやシャツ、ズボンの裾に隙間を作らないようにします。また、マダニが付いてもすぐ分かる薄い色の衣服を選んでください。虫よけ剤の利用も有効な対策の一つです。帰宅後、上着や作業着を家の中に持ち込まないようにし、下着を含めてすべて着替えます。さらに入浴時に、マダニが付いていないかよく確認しましょう。
 ダニ媒介性脳炎ワクチンの接種が可能です。保健所等に問い合わせてください。