2022年7月20日水曜日

スーパーセンチナリアン

 ゲスト/琴似駅前内科クリニック 髙柳 典弘 院長


「スーパーセンチナリアン」とは、どのような人たちを指す言葉ですか?

 100歳以上の長寿者を「百寿者(センチナリアン)」、110歳以上を「スーパーセンチナリアン」と呼び、その人たちの特徴を知ることが、老いにくく元気に生きる健康長寿のモデルやヒントになると注目されています。

 近年、世界的な長寿化を背景に、100歳以上の高齢者の人口は急速に増加しています。老人福祉法が制定された1963年当時、日本の百寿者は153人でしたが、2021年の統計では8万人を超え、51年連続で過去最多を更新しています。ただ、世界的な長寿国である日本においても、20年の国勢調査で日本のスーパーセンチナリアンは141人で、いまだ希少な存在です。19年の世界のスーパーセンチナリアンのランキングデータでは、上位34人がすべて女性で、驚くことにそのうち14人が日本人でした。


スーパーセンチナリアンは、どうして元気で長生きできるのでしょうか?

 スーパーセンチナリアンの最大の特徴は、100歳時点でも日常生活の自立が保たれており、百寿者の中でも特に健康寿命が長いことにあります。一般的に、老化に伴って免疫力が低下してくると、がんや感染症などのリスクが高まりますが、スーパーセンチナリアンは免疫システムの司令塔役「T細胞」の構成が50~80歳と比べて大きく変化しており、がん細胞などを殺す「CD8陽性キラーT細胞」が多く含まれ、また、通常は血液中に数%しか存在しない「CD4陽性キラーT細胞」が高い割合で含まれていることが明らかになっています。なぜ多いのかや、どのような働きをしているか詳細はまだ不明ですが、免疫と老化、長寿の関係が分かれば、健康寿命を延ばすことに貢献できると研究が進められています。

 また、血液バイオマーカーを調べた結果、「NT-proBNP(神経内分泌因子)」の血中濃度が低いほどスーパーセンチナリアンに到達する可能性が高いことも分かっています。NT-proBNPは心不全の診断にも使われるもので、心臓の働きが悪くなると数値が上がってきます。つまり、スーパーセンチナリアンは心臓や血管の老化が遅いのも特徴です。ランニングや水泳などの運動を継続することがNT-proBNPを低く抑え、心機能の維持につながることが分かっています。意識して適度な運動を日常生活に取り入れることで健康長寿を期待できることは確実です。

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