2021年8月18日水曜日

関節リウマチ診療ガイドライン2020

 ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師


「関節リウマチ診療ガイドライン2020」とは、どのようなものですか。

 関節リウマチの治療法は日々進歩しています。日本リウマチ学会による「関節リウマチ診療ガイドライン」が6年ぶりに改定されました。その背景には、この十数年、リウマチの有力な治療薬が相次いで発売されている現状があります。これらの新しい薬をリウマチ医は適切に使い分ける必要があり、そういった最新の標準治療や推奨度に関する情報を現場に行き渡りやすくすることが診療の質を保つために重要で、ガイドラインがその役割を担います。今回は、その中から「治療原則」について紹介します。

 関節リウマチの治療目標は、疾患の活動性の低下や関節破壊の進行抑制を介して、長期予後の改善、特に患者さんが生活の質を高く保ちながら長生きすることです。その目標を達成するために、①関節リウマチ患者の治療目標は最善のケアであり、患者とリウマチ医の協働的意思決定に基づかねばならない、②治療方針は、疾患活動性や安全性とその他の患者因子(合併病態、関節破壊の進行など)に基づいて決定する、③リウマチ医は関節リウマチ患者の医学的問題にまず対応すべき専門医である、④関節リウマチは多様であるため、患者は作用機序が異なる複数の薬剤を必要とする。生涯を通じていくつもの治療を順番に必要とするかもしれない、⑤関節リウマチ患者の個人的、医療的、社会的な費用負担が大きいことを、治療にあたるリウマチ医は考慮すべきである、という5つの治療原則が挙げられています。

 ①は特に重要な項目です。自分の病気に対して受け身になるのでなく、積極的に情報を集めたり、医師に自分の気持ちや要望を伝えたり、“賢い患者”になること。そして、患者さんと医師とが同じ目標に向かう“協働”を大切にしながら、患者さんが納得した上で治療を進めるのが第一ということです。②〜⑤は、治療は疾患の活動性や安全性、合併症などに基づいて決められること。抗リウマチ薬、生物学的製剤、JAK阻害剤とさまざまな選択肢がある治療薬は、一人ひとりに合わせて選択し、治療の経過を通じ、症状に合わせて治療薬を変えていくことが効果を上げるために重要であること。私たちリウマチ医療者は、継続的な通院や治療が必要な患者さんのさまざまな負担、特に経済的負担を考慮し、可能な限り支援していく必要があることなどがまとめられています。

 改定されたばかりの新しいガイドラインを手に、この内容を患者さんと共有しながら、よりよい治療の提供を目指していきます。


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