2021年6月2日水曜日

ギャンブル依存症

 ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院 中村 俊介 医局長


ギャンブル依存症とはどのような病気ですか。

 パチンコや競馬、カジノなどのギャンブルにのめり込む精神疾患です。ギャンブルに常に心を奪われている状態になり、一度始めると自らの意思ではやめられません。ギャンブルのことでうそをついたり借金をしたり、家族や周囲を巻き込み、金銭トラブルや人間関係の破綻を引き起こします。単に意思が弱い人、だらしない性格の人が陥る嗜癖(しへき)と誤解されがちですが、アルコール依存症や薬物依存症などと同じく、治療が必要な病気です。依存症はとても身近で、誰でもかかる可能性があります。

 どの依存症にも関係が深いとされるのはドーパミンという脳内の快楽物質です。ギャンブル依存症の場合、ギャンブルに勝つことでドーパミンが放出され、強烈な快感が脳に記憶されます。何度か繰り返すうちに脳が刺激に慣れてしまい、より強い刺激・快感を求めるうちにのめり込んでしまうのです。

 また、ギャンブル依存症はアルコール依存症やうつ病などの気分障害を合併する頻度が高いことが分かっています。


ギャンブル依存症の治療について教えてください。

 強い依存の状態であれば、自分の力だけで克服・回復するのは難しく、医療機関や専門機関による治療や支援が必要です。

 治療はカウンセリングなどの精神療法が柱となります。物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」、過去の自分の行動や生活態度を親など自分の身近な人との対人関係を通して振り返り、内省を深めることによって気付きや洞察を得る「内観療法」、普段の行動を変える必要性について動機付けを行い、自ら〈変わりたい〉という気持ちや発言を引き出す「動機付け面接」などがあります。

 同じ病気を抱えた人たちが集い、支え合いながら回復を目指す自助グループへの参加も非常に有効です。生き方そのものを変えない限り、ギャンブル依存症は再発してしまいます。仲間の苦労に共感すること、仲間の「ギャンブルをやめ続けている」成功例を身近に感じることが助けになります。また、孤立の防止が再発を防ぎます。


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