2020年11月18日水曜日

人工膝(ひざ)関節置換術

 ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 八木 知徳 院長


膝の痛みの原因と治療について教えてください。

 年を重ねるにつれ、膝の痛みを感じていませんか。中高年以降に多い膝の病気の一つに「変形性膝関節症」があります。痛みだけでなく、膝の形が変わってしまい、進行すると日常生活にも支障が出てきます。

 薬(消炎鎮痛剤、ヒアルロン酸の関節内注射など)、装具(足底板、サポーターなど)による保存治療を続けても痛みが改善しない場合は手術療法が考慮されます。代表的な手術として「骨切り術」と「人工膝関節置換術」があり、年齢や症状、生活状況に応じて使い分けます。骨切り術は、一般的には比較的年齢が若く、活動性が高い人に向いた術式とされます。

人工膝関節置換術は、どのような手術ですか。

 膝の前面を切開し、傷んだ関節軟骨を切除して、代わりに金属とポリエチレンでできた人工関節を取り付けます。最大の利点は、痛みがほとんど取れ、膝の変形も改善されることです。術後は早期からリハビリを始め、4週間前後での退院を目指します。

 退院後は、日常生活にはほとんど支障がありません。痛みがなくなるので、むしろできるようになることの方が多いです。例えばショッピングや旅行、あるいはゴルフや水泳といった簡単なスポーツも楽しめます。

 最近の人工関節は、製品の研究も進み20年以上の耐久性を期待できるようになりました。手術のタイミングによっては、生涯、人工関節の入れ替えを必要としないケースも珍しくありません。

 変形性膝関節症では、両膝が左右同じように変形している患者さんが少なくありません。そのような場合には、左右同時に手術する両側同時人工膝関節置換術を行っている病院もあります。手術時間は長くなりますが、リハビリ期間は片側の手術とほぼ同じで済むので、片側ずつ2回手術するより入院期間を大幅に短縮できます。また手術によるストレスも一度で済み、医療費も抑えられるため、精神面・経済面の両方で負担軽減につながります。

 望ましいのは、少しでも体が元気なうちに手術を受けることです。膝を十分曲げられないほど症状が進行してからでは、術後の経過にも影響します。長年の痛みから解放された患者さんは、笑顔が増えて、本当にはつらつと暮らしています。いたずらに痛みを我慢したり、むやみに手術を怖がったりせず、今、そして、これからの人生に必要な治療と真剣に向き合ってください。

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