ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長
便潜血検査による大腸がん検診について教えてください。
大腸がんの死亡者数は年間約5万人にも及びますが、大腸がん検診の受診率は伸び悩んでいます。連日報道される新型コロナウイルスによる、この半年間の死亡者数は約千人です(2020年7月現在)。感染症の予防対策と同様に、1人でも多くの人に大腸がん検診の大切さを理解していただきたいです。
大腸がんは早期発見できれば「治るがん」ですが、早期がんはほぼ無症状で、「便が細くなる」「血便が出る」などの症状はある程度進行しないと出てきません。「毎日の排便に問題はないから大丈夫」とおっしゃる患者さんも多いのですが、無症状であっても検診は必要です。
便潜血検査は、大腸がんによる目に見えない微量な出血を検出する検査で、札幌市では40歳以上を対象に年1回、指定医療機関において、市からの補助により400円で受けることができます。便潜血検査は、大腸がんの予防に有効な科学的根拠のある検診法です。陽性といわれたら、怖がらずに大腸内視鏡検査を受けてください。
大腸内視鏡検査について教えてください。
便潜血検査だけでは、大腸がんを確実に拾い上げられません。早期がんでは50%以上、進行がんでも10%ほどは見落とされる可能性があります。大腸内視鏡検査は大腸がんに対して最も精度が高く、また病変が見つかった場合は同時に治療も可能な検査です。できれば40歳を過ぎたら「まずは一度」、それ以降は主治医と相談し、数年ごとに受けるのが望ましいです。大腸がんの既往があったり、血縁者に大腸がんが多かったり、喫煙習慣のある人、肥満気味の人などは大腸がんのリスクが高いので、定期的な検査で自分の大腸の具合をしっかりと調べておくことをお勧めします。大腸内視鏡検査は痛い、辛いというイメージがあると思いますが、医療機器や技術の進歩、鎮静剤を使用する検査方法の普及などにより、以前に比べ苦痛が大幅に軽減されていますので、安心して検査してもらいたいです。
もしポリープが見つかれば、その表面の構造からがん化の危険度などが予測でき、切除しなくていいポリープ(非腫瘍性)か、切除が必要なポリープ(腺腫など)かを判断します。検査中、その場で切除することも可能ですが、ポリープが大きい場合などは、日をあらためて切除したり、入院が必要な場合もあります。