2020年6月17日水曜日

口呼吸と鼻呼吸

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎 院長

口呼吸が健康に良くないと聞きましたが、どういうことなのでしょうか。
 近ごろ、お口をポカンと開けているお子さんや若者が増えています。そのほとんどは、口で呼吸をしている「口呼吸」の人です。
 ヒトは1日に約1万リットル分の空気を吸い、そのほとんどを吐き出しますが、本来、人間は構造上、鼻で呼吸をするようにできています。口呼吸は、スポーツをする時やカゼで鼻がつまったりした時、鼻呼吸を補う補助的な呼吸です。呼吸を鼻でするか、口でするか、同じようですが、その意味は大きく異なります。
 鼻呼吸では鼻の繊毛や粘液でウイルスや汚染物質の侵入を防ぎます。また、冷たく乾いた空気を吸い込んでも、鼻の中に張り巡らされた毛細血管によって、喉の奥では体温近くまで温度が上昇し、湿度も上がります。このため、乾燥に強く湿気に弱いウイルスの生存率が低下します。
 一方、口呼吸では、そうした鼻が持つ防御機能は発揮されません。口から息を吸うと、冷たい外気のまま肺に届き、肺の免疫力が低下し、肺にかかる負担が増えてウイルスに感染しやすくなります。また、口呼吸で口の中が乾燥すると口の中や喉の奥にいる細菌が増殖し、口臭や虫歯、歯周病に感染するリスクが高まります。最近の研究では、口呼吸を続けていると、歯や口元の変形、顔面や身体のゆがみ、ドライマウス・アイ、いびきなどさまざまな身体の不調の要因になりうるとされています。

診断や治療について教えてください。
 鼻呼吸がうまくできず、口呼吸に なっているかどうかは、お口を閉じた状態で、舌が低い位置にあり、上あごとの間に隙間があいていると口呼吸が疑われます。また鼻呼吸はゆっくりと深い呼吸ですが、口呼吸は、浅く早い呼吸となります。自分では気付かないうちに、口呼吸になっているケースも多いので、かかりつけ歯科医に一度相談してみるといいでしょう。症状に応じて、適切な検査、治療をおこなっていきます。
 ご家庭でも簡単にできるのが、口呼吸の改善につながる「あいうべー体操」です。「あー」「いー」「うー」「べー」と発声するつもりで口を大きく動かします。「うー」ではタコのように唇を突き出し、「ベー」では口から思い切り舌を出しましょう。1日30セットやれば、舌や口のまわりの筋肉を強化することができ、年齢を問わず、鼻呼吸となりカゼ の予防や免疫力の向上など、健康増進に繋がります。

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