2020年2月5日水曜日

レビー小体型認知症

ゲスト/さっぽろ香雪病院 本谷 宣彦 診療部長

レビー小体型認知症とはどのような病気ですか。
 人に会っても名前が出てこない、何を食べたか忘れてしまうなど、年を取れば、誰でももの忘れはします。人や物の名前や漢字をど忘れしたり、とっさに言葉に詰まったりしても、後で思い出したり、別の機会ではきちんと話せたりするなら、年齢相応の生理的なもの忘れといえます。しかし、人に会ったこと自体、食事をしたこと自体を忘れてしまうようであれば、認知症のサインかもしれません。
 急速に進む高齢化とともに増えている認知症患者。その数は2025年には700万人にのぼると推計されています。認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症が一般的ですが、最近はレビー小体型認知症も注目されています。レビー小体型認知症はもの忘れもありますが、初期にはうつなどの症状が表れることも多く、うつ病として治療を続けているケースも少なくありません。後から認知機能の低下が表れ、いないはずの子どもや亡くなった両親の姿が見えるなど、実物のような具体的な「幻視」が繰り返し見えるのも典型的な症状です。また、筋肉が硬くなり、手足が震えたり、歩けないなどの歩行障害が出たりするパーキンソン病を合併していることが多いのも特徴です。このように多彩な症状を特徴とするレビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症など他の認知症と比べて介護が難しいとされます。
 レビー小体型認知症は、レビー小体という物質が神経細胞の中に出現し、脳の大脳皮質や脳幹に広がって神経に悪影響を及ぼし、認知症の症状を引き起こしていると考えられています。前頭葉を中心とする大脳皮質に出現するほど、より精神症状が強くなります。また、脳幹に出現するとパーキンソン症状を伴ってきます。

治療について教えてください。
 治療は、症状に応じて認知機能の低下を抑制する薬物療法を行います。幻視などの精神症状には、ごく少量の抗精神病薬を投与します。レビー小体型認知症は、抗精神病薬や向精神薬に過敏に反応し、副作用が出て効果が出ずに悪化する患者さんが多いという特徴もあるので細心の注意が必要です。
 デイケアなどの介護サービスの利用は、患者さんとご家族が在宅生活を穏やかに送る助けになります。デイケアでは在宅介護を受けている人を対象に、レクリエーションや入浴、食事などのサービスを提供し、ご家族の介護負担の軽減や日常生活に必要な動作(ADL)を維持・向上させる支援を行ってくれます。1人でいることが多く、人との接触が少ない方は、認知症の進行がはやく、また、精神症状も出やすいことが分かっています。デイケアなどの介護サービスを上手に利用し、身体を動かしたり、頭を使ったり、多くの人とコミュニケーションを取ることは認知症の予防・改善にも役立ちます。
 認知症は誰にでも起こり得ます。早期発見、早期治療が何よりも重要。ちょっとした症状でも、気になることがあればすぐに専門医を受診することが大切です。

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