2018年6月13日水曜日

職場のメンタルヘルス

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

職場のメンタルヘルスの現状について教えてください。
 現在、日本の就業人口は約6500万人といわれています。個人差はありますが、その大多数がストレスや悩み、不安などを感じながら仕事に従事しているのが現状です。ある調査では、約60%の労働者が「自分の仕事に不安、悩みがある」など心にストレスを感じていると報告されています。これらは職場内の人間関係や仕事の質、量、適性などによる原因のほか、昇進や異動、定年後の不安といった環境の変化に起因するところも大きいと考えられています。
 ストレスはさまざまなメンタルヘルス不調の原因となりますが、その中で最も頻度の高いものが「うつ病」です。うつ病は決して「メンタルの弱い人がかかる病気」ではなく、ストレスなどを誘因とした脳内化学伝達物質のアンバランスによって生じる「脳の病気」です。また、「生涯にうつ病を経験する人は14人に1人いる」という報告もあり、うつ病は誰でもかかる可能性があり、決して稀な病気ではないということを、本人のみならず職場の同僚、上司も理解しておく必要があります。

職場のメンタルヘルス対策について教えてください。
 近年、職場のメンタルヘルス対策は重要視されており、それらに携わる産業保健スタッフ(産業医、保健師、看護師、カウンセラーなど)を配置する職場も多くなってきました。また、主に管理職を対象としたメンタルヘルス研修会を開催している職場も増加しています。また、2016年度から厚労省は職場のメンタルヘルス不調者の早期発見・介入のため、「ストレスチェック制度」を導入しました。これは「ストレス状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを軽減させる」一次予防と、「リスクの高い労働者を発見し、医師による面接指導につなげる」二次予防を目的としたものです。具体的には「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」など計57項目からなるストレス評価尺度です。
 16年度、道内で精神障害による労災認定を受けた人はこれまでで最も多く、前年度に比べ2倍近くに増加しました。今後もこの傾向は続くものと予想されます。職場のメンタルヘルスに関して心配事があれば、まずは職場内の産業保健スタッフに相談すること、そして、必要があれば精神科・心療内科を受診することをお勧めします。

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