2016年8月3日水曜日

働く人の心の健康


ゲスト/医療法人社団五稜会病院  中島 公博 理事長

ストレスチェック制度が始まり、働く人の心の健康づくりが求められています。働く人の心の健康の現状はどのようなものでしょうか。
 悲しいことですが、自殺者数が減った現在でも、毎日18.6人のサラリーマンが自ら命を絶っており、その多くに「うつ」があるといわれています。心の健康問題は、長期休職の理由として最も多くなっています。仕事を続けている状態でも、本来の能力を発揮できなくなっており、こうした生産性の低下による経済損失は、自死や休職による損失を大きく上回ると推定されています。また、平成27年は心の健康問題による労災申請が過去最多となりましたが、時間外労働時間別に労災が認められた件数を見ると20時間未満が最多となっていました。働く人の健康を守る上で時間外労働の削減は重要課題ですが、心の健康を守るためには、それだけでは十分ではないといえます。昨年12月から義務化されたストレスチェック制度は、働く人ひとりひとりが自分のストレスの状態を把握し、希望すれば医師に相談をする機会を得ることができます。また、会社は職場のストレスについて把握し、必要性や有効性を検討した上で対策を行うことができるようになります。働く人の心の健康を守るだけでなく、失われている生産性の回復につながるため、ストレスチェック制度は働く人と企業の双方に利益があると思います。

心の健康づくりのためにできることを教えてください。
 まず、心の健康も「つくれる」「予防できる」という認識を持つことが大切です。個人で取り組めることとしては、まずは健康的な生活を心がけることです。メンタルヘルス不調の多くは脳の機能不全が見られます。脳は身体の臓器の一つです。食事や運動、睡眠など一般的にいわれる健康習慣は、心の健康づくりでも基本です。その上で、ストレスチェックで自分の心の状態を確認し、ストレスが強い時には、迷わず専門家に相談すると予防につながります。医師以外でも、会社に保健師がいる場合やカウンセリング窓口がある場合は、そこに相談するのもよいと思います。会社としては、ストレスチェックの結果を踏まえ、心の健康づくりに計画的に取り組む必要があります。ただ、ストレスチェックの結果を活用するためには、専門的な知識が必要です。会社もうまく専門家を利用することが大切だと思います。

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