2016年7月20日水曜日

加齢黄斑変性


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

加齢黄斑変性とはどのような病気ですか。 
 年を重ねるとともに眼球の奥にある網膜の中心部「黄斑」に障害が生じる病気です。欧米では中途失明原因のトップであり、日本では50歳以上の約1%がこの病気になり、総患者数は70万人弱と推定されています。
 加齢黄斑変性には、「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」の2種類があり、日本人の加齢黄斑変性の約9割が滲出型です。健康な状態では存在しない新生血管と呼ばれる異常な血管が黄斑部の脈絡膜(みゃくらくまく)から発生し網膜側に伸びてくるタイプで、新生血管の血管壁は大変もろいために、血液が黄斑組織内に漏れ出し、黄斑機能を障害します。症状は、物を見るときに<中心がゆがむ><ぼやける><暗い>などさまざまですが、最初は片方の眼に起きて程度も軽いために、患者さん本人は年のせいとして見過ごしていることも少なくありません。滲出型は急速に進行し視力に障害を起こします。見たいところが見えず、読みたい文字が読めないというとても不便な状態になり、放置すると失明の恐れがあります。

診断と治療について教えてください。
 近年診断技術が飛躍的に進歩し、従来の造影剤を使った深い部分の血管の状態を見ることができる「蛍光眼底造影」に加え、患部の3D画像や眼球の断面図を鮮明に見られるOCT(光干渉断層計)を使った「網膜断層検査」などが行われます。これらにより進行の早い滲出型でも小さな新生血管を早期に発見し、効果的な治療につなげることができます。
 最近まで治療方法のない病気でしたが、治療も目覚ましい進歩を続け一時主流だった、新生血管をレーザー光で焼き固める「レーザー光凝固術」に加え、より正常な周囲の組織にもダメージを与える可能性の少ない、「抗VEGF療法」という新生血管の発育を抑える薬を、眼に直接注射する方法が最近実施されるようになりました。継続的な治療が必要ですが、視力の維持のみならず、視力の回復の可能性も高く、現在極めて有力な治療法になっています。
 予防の観点からは、亜鉛や抗酸化ビタミン、ホウレンソウやケールに含まれているルテインなどを摂取すると加齢黄斑変性の発病率が低くなることが分かっています。体に必要な栄養素は毎日の食事で補うのが基本ですが、それで足りない分はサプリメントを活用するのも手でしょう。加齢黄斑変性の予防や、発症後ごく初期の段階の人や一方の眼に発症した人には、サプリメントの内服が有力な手段です。

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