2016年3月9日水曜日

気管支ぜんそくとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の合併


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

気管支ぜんそくとCOPD、両者の合併について教えてください。
 アレルギーなどにより気道に慢性的な炎症が生じる気管支ぜんそくは、気道が過敏になり狭窄(きょうさく)を起こしますが、治療により回復しやすいのが特徴です。一方、COPDは慢性閉塞性肺疾患といわれ、慢性気管支炎や肺気腫を指します。主にタバコが原因で、気管支の炎症や肺の弾力性の低下によって気道が閉塞し、呼吸機能が低下します。症状としては体を動かした時に息切れが生じやすくなります。人口の高齢化に伴い増加している病気で、気管支ぜんそくと比べると回復しにくいです。
 近年、この両者の特徴を併せ持ち、診断上どちらか一方に明確に分けられない病態として「気管支ぜんそく・COPDオーバーラップ症候群(ACOS)」が注目されています。ACOSは、それぞれの単独例よりも増悪の頻度が高く、予後が悪いという点が問題になります。気管支ぜんそくの患者さんでは、年齢とともにCOPDの合併率が上がり、65歳以上では約半数が合併しているという報告があります。一方、COPDの患者さんでも、約3割が気管支ぜんそくを合併しているといわれています。ACOSの診断基準はまだ確立されていませんが、両者の所見が同程度みられる場合はこれを疑います。

治療について教えてください。
 気管支ぜんそくの治療には、吸入ステロイドや短時間及び長時間作用性β2刺激薬などが、COPDの治療には短時間及び長時間作用性β2刺激薬や短時間及び長時間作用性抗コリン薬などが用いられます。ACOSの薬物療法の基本は、吸入ステロイドと長時間作用性気管支拡張薬の併用です。長時間作用性気管支拡張薬にはβ2刺激薬、抗コリン薬、経口テオフィリン薬などがあり、自覚症状や副作用に注意しながら、単剤もしくは多剤併用で使われます。吸入ステロイドは、COPDでは中等症以上で使用されますが、ACOSの場合は早期から必要になります。最近は重症のぜんそくに長時間作用性抗コリン薬が保険適用になり、症状のコントロールが不十分な場合は追加投与が可能になっています。
 気管支ぜんそく、またはCOPDの治療を行っているにもかかわらず、症状が持続したり、増悪を繰り返したりしている場合には、ACOSを疑ってみることも大切です。

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