2016年3月16日水曜日
うつ病からの職場復帰
ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 響 徹 診療部長
うつ病が増え続ける現在、休職中の人の職場復帰が大きな課題となっていますね。
厚労省の調査によると、2011年全国のうつ病患者数は95万8千人、1996年の43万3千人から倍増しています。うつ病が原因の休職者も多くの職場で増加し、社会全体・組織全体としてのメンタルヘルス対策が必要となってきました。
うつ病の治療のため休職をした人にとって気にかかるのが職場復帰です。多くの患者さんは早期の復職を希望しますが、いったん復職しても、遅れを取り戻さなくてはという焦りや、周囲に対する申し訳なさから無理をしてしまい、再発や休職を繰り返してしまうケースも目立ちます。
うつ病は再発しやすい病気で、治るプロセスも一進一退で波があります。復帰した職場が、うつ病になる前と同じような状況で、同じようなストレスがある場合、再発の可能性が高くなります。一時的に症状が改善しても、主治医の指示に従って焦らずに適切な治療を続けることが必要です。その上で、本人と主治医、職場の上司や人事担当者を交えた面談(診察)の中でじっくり話し合い、復職の時期や復職後の働き方、職場環境の調整などについて考えていくことが大切です。
職場復帰のポイントについて教えてください。
うつ病になりやすい人は、責任感が強く、無理をして頑張りがちです。前の自分に戻ろうとするのではなく、「無理をしない」「頑張りすぎない」という心の管理の仕方を覚えるのが大事です。
職場の上司、同僚の協力と理解も不可欠です。休職者が無事に復職してきたときは、病気に配慮しつつも、特別視することなく、これまでと変わらない態度で温かく迎えてあげてください。また、一定期間は短時間勤務やフレックス勤務といった“慣らし出社”の時期を設けて、段階的にフルタイム勤務に近づけていくのがいいでしょう。うつ病と診断された部下、同僚とどのように接するか、職場としてどのように迎え入れるか、それは今や誰もが考えておくべき問題といえます。
うつ病の治療、うつ病からの回復において、家族やパートナーなど身近な人たちのサポートは、患者さんにとって何より大きな支えになります。つらい気持ちに共感してあげること、そしてよく話を聞いてあげることが重要です。「決して一人じゃないんだよ」という気持ちが伝われば、必ず光明が見えてくるはずです。
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