2014年12月24日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 西 裕 診療部長

認知症とはどのような病気ですか。
 認知症は、いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下した状態を示します。原因別にいくつかの種類に分類され、代表的なものが「アルツハイマー型認知症」で全体の約5割、次に多いのが「血管性認知症」と「レビー小体型認知症」でそれぞれ約2割を占めます。
 アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積し、脳が萎縮して起きるとされ、物忘れを主な症状として緩やかに進行します。血管性認知症は、脳梗塞など脳卒中が原因で発症し、階段状に増悪、進行するものです。レビー小体型認知症は、脳にレビー小体という物質がたまる病気で、ないはずの物が見える幻視(げんし)や、認知機能の急激な変動などが現れるのが特徴です。
 症状は、認知症の種類や個人によって異なりますが、初期には記憶障害が現れ、進行するにつれ、妄想や徘徊(はいかい)、攻撃的行動などの精神症状や行動異常を伴うことが多いです。よくあるのが「物盗(と)られ妄想」です。財布や貴重品の置き場所を忘れてしまうのですが、忘れた自覚がないので「盗まれた」と被害妄想を抱くというものです。

認知症の治療について教えてください。
 多くの認知症には根本的に治療する薬がないので、治療は病気の進行を遅らせることが重要となります(アルツハイマー型認知症には進行を緩和する薬があります)。過去の記憶について語り、脳の活性化につなげる「回想療法」や、音楽を通して脳を刺激する「音楽療法」などが行われることもあります。
 家族の方に気になる認知症の症状が現れたとしても、受診させるのをためらってしまうケースや、また本人も病院に行きたがらないことが多いです。しかし、受診を先送りにすればするほど生活面での問題が大きくなりがちです。健康診断的な面を強調するなど、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ受診を促すのが適切です。
 もし認知症と診断されたら、市町村の窓口で介護保険制度に基づく申請を行いましょう。認定された要介護の程度に応じて、訪問介護、通所介護、短期入所、生活介護などの介護支援サービスが受けられます。認知症の介護は長期間に及びます。家族の中だけで問題を抱え込まず、医師、看護師、福祉関係者などと相談することが大切です。

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