2013年11月20日水曜日
ヨーロッパリウマチ学会と関節エコーの重要性
ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長
関節リウマチをめぐる最近の話題について教えてください。
今年6月スペインのマドリードで、ヨーロッパリウマチ学会が開催されました。この学会では何年かおきにリウマチの治療法についてリコメンデーション(勧告)が発表され、われわれリウマチ医に対して治療指針を示してくれます。今年はその年に当たり、診断から治療までの流れや治療薬の分類など、リウマチ患者さんをどのように診ていくべきかについての新たな提言が相次ぎました。
その中で、関節リウマチ診療における画像診断の重要性、特に関節エコーの有用性についての勧告が出され、信びょう性の高いデータと共に発表されました。それはイギリスの研究によるもので、関節エコーを使った診療と使わなかった診療では、確定診断がつくまでの期間に約1カ月、また、治療開始までの期間にも約1カ月の差が生じたとされています。関節リウマチ診療では、より早期の診断・治療によって関節の破壊と機能低下のない寛解状態へと導くことが求められます。関節エコーによる画像診断は、理学的所見などによる従来の診断や評価に比べ、早期に、正確に関節の炎症を検出し、治療開始の必要性を判断できるということが証明されたのです。
別の勧告では、治療法の選択についてリウマチ医は患者さんと一緒になり考えていくように指導しています。患者さんにも一定の知識が必要であり、患者さん自身が積極的に治療に参加していくことが必要な時代になってきました。
早期診断・治療のための画像検査について教えてください。
関節リウマチにおける画像診断の中心はX線とMRIによるものでしたが、これらの手法で判断できない炎症や血流の状態をリアルタイムに、そして時系列的に診断可能な検査が関節エコーです。怪しいと思われる関節に、聴診器のように関節エコーを当てると、炎症を起こしている箇所が、まるでメラメラと燃えているかのように画面に赤く映し出されます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。
必要な時に必要な関節を気軽に検査できるという利点のほかに、患者さん自身にも炎症の状態が一目で分かるので、病状の理解に役立ち、リウマチを鎮めていこうという強い気持ちである“治療心”を高めることができるというメリットもあります。
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