ゲスト/みどり内科クリニック 小田 朗 副院長
動脈硬化とはどのような病気ですか。
動脈硬化とは、血管の弾力性が失われて硬くなり、血液の通り道が狭くなったり、血液の流れが滞ったりする状態を指します。血管が完全に詰まったり、血管の内側からはがれ落ちた物質が血液中を流れ、細い血管を詰まらせたりするケースもあります。脳につながる大切な血管である頸(けい)動脈が硬くなると、脳に十分な血液が流れなくなる恐れもあります。
動脈硬化は、サイレントキラー(静かなる殺人者)ともいわれています。それは動脈硬化そのものには自覚症状がないからです。加齢とともに静かに進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる疾患を起こして初めて動脈硬化に気付くというケースも多いのです。
動脈効果を引き起こす原因としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック・シンドローム、肥満、喫煙、動脈硬化の家族歴などが挙げられます。動脈硬化はある日急に表れる症状ではなく、若い頃からの生活習慣の積み重ねによる“血管の履歴書”といえます。つまり、動脈硬化の予防は若いうちから行う必要があるのです。
動脈硬化の予防について教えてください。
動脈硬化の予防には、定期的な検査を受診することが何よりも大切です。特に有効と思われる検査が、頸(くび)の左右に超音波をあてる頸動脈エコーです。この検査では、動脈硬化を簡単に視覚化して調べることが可能です。痛みや被ばくもなく定期的に検査を行えます。検査効果を過去のデータと比較できるので、高血圧、高脂血症などの治療が適切かどうか、実際に動脈硬化の進行を阻止できているかどうかの効果判定ができ、その結果に応じて治療を変更したり、生活習慣の改善を促したりすることができます。患者さんと医療者が共通の目標を持つ動機付けになるという利点もあります。さらに、頸動脈は全身の血管の中で、もっとも動脈硬化が生じやすいという特徴があるので、全身の動脈硬化の“代表”として捉えることもできます。
頸動脈エコーは、動脈硬化のある人、動脈硬化が疑われる人には保険適用があります。動脈硬化のリスク要因を持つ人、検診などで脳梗塞が疑われたり、無症候性脳梗塞があると指摘された人は、一度頸動脈エコーで動脈硬化の状態を自分の目で確かめてみることをお勧めします。