ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 島子 智之 医師
心の病気の初期症状とそのサインについて教えてください。
睡眠異常(不眠・過眠)、食欲異常(過食・拒食)、やる気が出ない、そわそわして急に落ち着かなくなる、人と接したくないというのが、心の病の代表的な初期症状です。趣味や好きだったものに急に興味を持たなくなる、示さなくなるといった場合も注意が必要です。一般的に、そういった症状が2週間程度続く場合は、心の病のサインだと考えてください。
最近では、テレビやインターネットの情報だけで、自分の病気を判断して「自分はうつ病だ」と思い込んでしまう人が多くみられます。それらの情報は、正しいものもありますが、間違った情報も数多く含まれています。すべてをうのみにして、病気でもないのにふさぎ込んでしまっては、別の病気を発症してしまう可能性も考えられます。
心の病は、早期発見・早期治療が肝心です。体がだるい、食欲がない、よく眠れないなど、自分の体調がいつもと違うと感じたら、まずは一度専門病院を受診することをお勧めします。
心の病は、どのような人が発症するのでしょうか。
心の病は年々、発症数が増加傾向にあり、現在では日本人の5人に1人がうつ病を発症しているといわれています。また、うつ病以外にも、不安障害やパニック障害などさまざまな心の病が存在しています。ストレス社会で生きる私たちにとって、心の病はいつ、誰が発症してもおかしくない、非常に身近な病気といえます。
しかし、「精神科」や「心療内科」と聞いただけで、受診をためらう人が少なくありません。時代とともに改善されてきたと思われますが、心の病が一種特別な病気とみなされることがあり、カウンセリングに通っていることを周りの人に悟られたくないと考える人が多いようです。心の病気は自分の病のつらさと、周りに理解してもらえないつらさで、二重につらい病気です。辛さを我慢している状態が続くと、病状が悪化し大変なことになってしまうケースもあります。だからこそ、家族や友人、会社の同僚など、本人以外の第三者が心の病の症状や治療などについて正しく理解し、病気の兆候を見逃さないようにすることが重要なのです。心の病は、専門医による適切な治療はもちろんですが、周囲の人が病気への理解を示し、共感してあげることが一番の特効薬といえます。