2010年8月11日水曜日

「慢性硬膜下血腫」

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
 慢性硬膜下血腫は、硬膜という脳を包んでいる膜と脳との間に血がたまる(血腫)病気です。頭にケガをした後に起こることが一般的ですが、覚えていないような軽いケガでも起こる場合があります。血腫が少ない場合は、ほぼ無症状です。血腫がたまって、脳を圧迫してくると頭痛や頭に重だるさを感じるなどさまざまな症状が出てきます。さらに圧迫が進むと、歩行障害や手足のまひが出てきて、脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害と似た症状を示す場合も多いです。高齢者の場合、認知症と間違われることも多く、また、頭痛の訴えが少ないため、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、周りの人が注意する必要があります。
 慢性硬膜下血腫は、ケガをしてから3週間〜数カ月たって症状が出てくることの多い病気です。50歳以上の中高齢者、お酒の好きな人、肝臓の悪い人、血液をサラサラにする薬を服用している人に多く見られる傾向があります。

慢性硬膜下血腫の治療について教えてください。
 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過を観察します。軽いものであればそのまま治ってしまう場合もあります。症状が出ているものは手術を行います。
 脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持つ人が多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は、脳に直接触れることはほとんどなく、一般的には危険は少ないです。また、局所麻酔で行うので、高齢の人でも比較的軽い負担で治療ができます。手術は、血腫のあるところの真上の皮膚を切開します。頭蓋骨に穴を開け、硬膜を切開して血腫の中に管を入れます。血腫の中身は多くの場合は液状なので、管を通じて取り除くことができます。管を入れて中の血腫を自然に排出させる方法を「穿頭(せんとう)ドレナージ術」といい、管を通して血腫の中に生理食塩水を入れて、血腫を洗い流す方法を「穿頭洗浄術」といいます。1週間ほどで抜糸して退院できることがほとんどで、術後2〜3日で退院して外来で抜糸するケースもあります。
 頭を打った時など、軽いケガであれば慌てて病院に来る必要はありませんが、1カ月ほどしてから、頭が痛くなってきたり、先に挙げたような症状が気になる時には、我慢しないで専門医を受診してください。

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