2010年3月17日水曜日

「非アルコール性脂肪肝炎」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

―非アルコール性脂肪肝炎とはどんな病気ですか。
 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、非飲酒者で主に肥満などの生活習慣病を誘因として発症する慢性の進行性肝疾患です。日本では現在、100万人、成人の約1%が患者と推定されます。そのうち2割が10年程度で肝硬変へ進行すると予想され、しばしば肝細胞がんの発症母地ともなります。
 NASHはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型であるといわれており、遺伝的な要因に肥満(特に内臓脂肪型肥満)を背景とする糖尿病(特にインスリン抵抗性)などの環境因子が加わり、酸化ストレス、炎症などにより発症に結びつくと考えられています。
 診断は、肝臓のGOT(AST)、GPT(ALT) というトランスアミナーゼ値が高いことが一つの指標になります。さらにB型肝炎、C型肝炎を除外できる、飲酒習慣がない、BMI35以上の肥満であるという条件にあてまはる人はNASHの可能性が高いです。血小板数と肝臓の硬さの指標になる線維化マーカーの値を調べ、超音波検査を行い、慢性の肝臓病と確認されたら肝臓の組織の一部を採取して調べます。

―治療法について教えてください。
 治療は、まず食事と運動による減量を行います。NASHでは3kg程度の減量でも、トランスアミナーゼ値の低下など肝機能の改善がみられますので減量による効果はかなり大きいです。効果が期待できない場合は、薬物治療になります。
 NASH患者の7割程度は高血圧を合併しており、高血圧により肝臓の線維化が進行するということが明らかになってきているので、高血圧の場合は降圧剤によって血圧の正常化を図ります。また脂質異常も合併していることが多く、肝臓を保護する点においてもコレステロールを厳重にコントロールしていくことは重要です。肝硬変の疑いがある、あるいは初期の肝硬変まで進行したNASHにおいては最近、糖尿病の治療薬でありインスリン抵抗性を改善するチアゾリジン誘導体の有効性が報告されており、進行を抑制する目的で使用されています。
 いずれにしても現在のところNASHに特異的に効く治療は確立しておりませんので、メタボリックシンドロームの治療を確実に行い、肝硬変への進行をいかに防ぐかが重要です。

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