ゲスト/青空たけうち内科クリニック 竹内 薫 院長
橋本病について教えてください。
橋本病は、慢性甲状腺炎とも呼ばれ、リウマチなどと同じ膠原(こうげん)病(自己免疫疾患)の一つで、甲状腺機能低下症の代表的な疾患です。同じ甲状腺の病気・バセドー病とは正反対で、甲状腺ホルモンの量が不足することによって、新陳代謝が悪くなり、全身に影響が出ます。寒がり、疲れやすい、動作が鈍い、体重増加、声かれ、むくみ、のどの違和感、ボーッとした表情、物忘れ、無気力、眠気、脈が遅くなる徐脈、息切れ、食欲低下、便秘、皮膚乾燥、脱毛、脱力感、筋力低下、肩凝り、月経不順、コレステロール値上昇、貧血など、さまざまな症状が出てきます。
橋本病の原因は、甲状腺を異物とみなして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)ができ、この抗体が甲状腺を破壊していくため、徐々に甲状腺機能低下症になります。
また、甲状腺が腫大する(硬く腫れる)ことがあり、甲状腺腫が大きい人は、のどの圧迫感や違和感を訴える場合があります。20歳以降の女性に多く、潜在性や軽症例を含めると成人女性の約10%程度と高頻度です。
治療について教えてください。
甲状腺機能が正常であれば、体には影響はなく自覚症状もないので、薬は必要ありません。甲状腺機能の低下がある場合は、足りない分の甲状腺ホルモンを補充します。薬の効果が出れば症状が軽減し、家事、仕事、妊娠など日常生活を普通に送ることができます。ただし、足りない分を補っているだけなので、長期間の治療が必要になります。
橋本病は合併症を起こしやすく、リウマチやシェーグレン症候群などの膠原病を合併しやすい病気です。また、まれに悪性リンパ腫になることもあります。治療の必要がなくても、定期的な診察は欠かさないようにしましょう。比較的多い疾患ですので、首に違和感を覚えたり、前述の症状がある場合は内科医等を受診することをお薦めします。