2010年1月6日水曜日

「個人と社会の関係」について

ゲスト/五稜会病院 千丈 雅徳 医師

「自分さえよければ」という傾向が強くなっていると感じられますが。
 日本人は昔から「世間体を気にする」といわれてきましたが、最近は、ごく限られた仲間内だけの世間体を非常に気にするという傾向が見られます。たとえば、メールが来たらすぐに返信しなければならない、そのために人前でずっと携帯をいじっているなど公共空間でのマナー違反、ルール違反を平気で犯す。つまり、ごく小さな世界での世間体を優先し、公の世間体には無頓着になっています。
 昨年、オバマ大統領が就任式のスピーチで「一人一人の責任ある行動」を強調しました。また、約50年前の大統領で今も人気がある故ジョン・F・ケネディは、就任式で「わが同胞のアメリカ人よ、あなたの国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたがあなたの国家のために何ができるかを問おうではないか。わが同胞の世界の市民よ、アメリカがあなたのために何をしてくれるかではなく、われわれと共に人類の自由のために何ができるかを問おうではないか」と述べ、文句を言うだけで何でも他人のせいにすることを戒め、主体的に自らの運命を切り開いていくことを強調しました。

自分を犠牲にすることでストレスもたまるのではないですか。
 自己を犠牲にする必要はありません。「何をしてもらえるかではなく、何ができるか?」という意識の大切さについては、昨年日本を沸かせWBCで活躍した選手たちが良いお手本になります。
 たとえば、イチローが9年連続200本安打を達成し、ダルビッシュは北海道日本ハムのリーグ優勝に貢献し、パ・リーグのMVPも獲得しました。彼らはチームの中で何とか貢献しようという気持ちが強く、そのために厳しく自己管理を行い、結果として個人の成績も残したわけです。個の利益と公の利益は、決して対立するものではありません。
 私たちも自分を磨きながら同時に社会の役に立つよう心掛けたいものです。しかし、そのためにはメンタル面での強さが必要です。スポーツの現場では、メンタルトレーニングは一般的になりつつあります。悩みを独りで抱え込んでプレッシャーに押しつぶされては駄目です。周囲に相談してください。相談できる人がいない、自分で感情のコントロールが難しいと感じたら、心療内科や精神科で、専門家にアドバイスを求めることをお薦めします。ストレスからうつに移行する患者さんも多いので、早めに受診することが肝心です。

人気の投稿

このブログを検索