2006年2月15日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性とはどんな病気ですか。

 人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体を通って、網膜の上に像を写して物を見ます。カメラに例えると、網膜はフィルムにあたります。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に、異常な老化現象が起こり、黄斑が変化して視力が低下する病気が、加齢黄斑変性です。視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れ、時には失明に至る場合もあります。原因としては、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。新生血管の成長による出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。治療が遅くなると、高度の視力障害が残ってしまいます。

治療法について教えてください。

 最近では、治療の一つして、光線力学療法(PDT)があります。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、肘(ひじ)の静脈に注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは、通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。ただまれに、網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。必要に応じて、適度な期間を設けて数回治療が必要な場合もあります。また初回は、2泊程度の入院が必要になります。治療は健康保険の適用になります。
 加齢性黄班変性は、早期に治療するほど効果が期待できます。視界や視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は限られています(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)。希望する場合は、主治医によく相談することをお勧めします。

人気の投稿

このブログを検索