2005年3月16日水曜日

「機能性胃腸症」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

機能性胃腸症について教えてください。

 胃痛、胃もたれ、むかつきなどの上腹部症状が続き、検査をしても胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの異常が認められない場合、機能性胃腸症(Functional Dyspepsia=FD)と呼んでいます。以前は慢性胃炎と診断されていましたが、実際には胃の炎症や胃酸による不快症状だけでなく、胃の運動機能低下に多くの原因があることがわかり、FDと呼ばれるようになりました。FDは、胃もたれ、むかつきなど消化管内容物のうっ帯症状を主体とする「運動不全型」、夜間や空腹時の疼(とう)痛症状が強く、食事や制酸剤によって軽快をみせる「潰瘍症状型」、症状が多彩で一定しない「非特異型」の3つのタイプに分類されます。中でも運動不全型が半数以上を占めるといわれています。
 FDの主な原因としてストレスが挙げられます。脳の迷走神経は胃のぜん動運動と胃酸の分泌をコントロールしています。ストレスを抱えると迷走神経の働きが鈍り、胃の運動や胃液成分のバランスが崩れ、胃もたれやむかつきなどの症状が現れます。ほかに、不規則な食事、過労、アルコールの飲み過ぎ、胃の手術歴なども、胃の運動機能を低下させます。

治療法を教えてください。

 3つのタイプに応じて治療法が異なります。運動不全型は、胃の運動機能の改善を図ることを目的に消化管運動賦(ふ)活薬を処方します。潰瘍症状型は、通常の潰瘍と同じく酸分泌の亢進(こうしん)が主たる原因であるため、酸分泌抑制薬が選択されます。非特異型は、心因性の要因に基づく場合が少なくないため、消化管運動賦活薬や酸分泌抑制薬を使いながら、さらに抗不安薬や抗うつ薬を併用します。
 加えて、生活の改善も重要です。ストレスをためず、規則正しい生活を送るように心掛けます。特に食事は、規則正しく3食取ること、脂っこい物、甘い物を控えることが大切です。慢性胃炎として、制酸剤などを処方されていても改善しない人は、FDである場合が多々あります。適切な治療によって症状は改善されますので、専門医の受診をお勧めします。

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