2005年3月2日水曜日

「糖尿病網膜症」について

ゲスト/あびこ眼科 安孫子徹 医師

糖尿病網膜症について教えてください。

 糖尿病、すなわち血液中の糖濃度が上昇する代謝異常によって引き起こされる網膜血管の障害で、現在日本の中途失明原因の第一位といわれています。2002(平成14)年度の厚生労働省の調査によると、20歳以上の日本人で糖尿病に罹患(りかん)している人は740万人、予備軍まで含めると1620万人にも上ると推測されています。実に、日本人の10人に1人は糖尿病の可能性があるというのが実情です。
 糖尿病網膜症は、
(1)網膜に点状出血や硬性白斑(はくはん)がみられる単純網膜症、(2)多発する軟性白斑や網膜に血管閉塞領域がみられる増殖前網膜症、(3)破れやすい新生血管が生じ、ときに硝子体出血(眼球内腔への出血)、牽引(けんいん)性網膜はく離(増殖組織が引き起こす網膜はく離)が出現する増殖網膜症、この三段階で進行していきます。厄介なのは、増殖前網膜症においても視力低下などの自覚症状が少なく、見えづらいと自覚するころには、増殖網膜症まで進行している可能性が高いことです。

糖尿病網膜症の予防と治療について教えてください。

 網膜症の予防は、糖尿病自体のコントロールが第一です。しかし、過去に血糖コントロール不良な時期があると、現在はコントロール良好でも、網膜症が出現することがあります。予防するには、患者自身も内科医、眼科医とともに糖尿病及び網膜症についての理解を共有し、連携して血糖コントロールを進めていく必要があります。
 眼局所の治療としては増殖前網膜症期に中心部以外の網膜全体をレーザー光線で凝固する汎網膜光凝固術が大変重要です。この時期に光凝固治療を受けずに増殖網膜症に移行すると、重篤な視力低下を来します。さらに、硝子体出血や牽引性はく離が生じた場合には、硝子体手術が必要になります。
 糖尿病と診断された方、健康診断で血糖が高めと言われた方は、まず信頼できる糖尿病専門医と眼科専門医を受診してください。たとえ、これといった症状が無くても中断することなく定期的に内科及び眼科の診察を受け、「見る」というすばらしい機能を守っていきましょう。

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