2005年2月2日水曜日

「痔(じ)ろう」について

ゲスト/札幌いしやま病院  樽見 研 医師

痔ろうとはどんな病気でしょうか。

 痔ろうは、直腸と肛門の境界部分にあるすき間(肛門陰窩=こうもんいんか)部分に細菌が入り感染し、炎症を起こして肛門周囲膿瘍(のうよう)になることから始まります。急性期は、炎症による激しい痛みや発熱に襲われます。しかし、膿瘍が破れたり、病院で切開して膿が出きってしまうと、一時的に痛みが治まるため、完治したと錯覚しがちです。実際には、肛門周囲膿瘍によって肛門内と皮膚の間に細菌の通り道ができ、そのままほっておくと通り道がアリの巣状に広がり、「痔ろう」の状態になります。痔ろうが完全にできあがった後の自覚症状は、鈍痛や痔ろうによってできた穴から膿が出て下着を汚す程度です。しかし、排便のたびに細菌に侵されるため、痔ろうは枝分かれして深く複雑に広がり、肛門周囲の穴が複数になる場合もあります。また、まれに病巣ががん化し、痔ろうがんになることもあります。

治療や予防法について教えてください。

 痔ろうは、30~40代の男性に多い病気ですが、原因ははっきりしていませんし、遺伝的なものでもありません。ただ、下痢をしやすい人、抵抗力の落ちている人は罹患(りかん)しやすい状態にありますから、規則正しく体調を整えて暮らすというのが、唯一の予防策といえます。クローン病(大腸や小腸などに潰瘍=かいよう=ができる慢性の炎症性の病気)に痔ろうを併発する場合も多いので、クローン病の人は注意が必要です。痔ろうに有効なのは、早期発見と適切な治療です。肛門に痛みを感じたり、下着が膿で汚れたら、すぐに受診しましょう。
 肛門周囲膿瘍の時点では膿を出す応急処置で症状が消えますが、根本的な治療は手術による病巣の摘出以外にありません。深く複雑に進行した痔ろうだと、括約筋を傷つけ、肛門機能に支障をきたす可能性があります。場合によっては、括約筋温存手術が不可能なこともあり、人工肛門が必要になります。そのような事態を避けるには、なるべく早く、病状の軽いうちに痔ろうの治療を数多く行っている専門医を受診することが必要です。入院期間は軽いものなら1週間、重症の場合は3週間程度です。

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