2017年4月5日水曜日
適応障害
ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 本谷 方克 医師
適応障害とはどのような病気ですか。
適応障害は、仕事や人間関係がうまくいかないなどのストレスによって、
落ち込んだり、不安感やイライラが続いたりするなど、うつ病とまではいきませんがそれに似たような症状を起こします。頭が痛い、眠れない、全身の倦怠感などの身体症状が出たりする場合もあります。適応障害は、あらゆる精神疾患の初期症状のような側面があり、誰もがかかりうる身近な心の不調です。近年、適応障害が急増している背景には、超ストレス社会の到来に加え、うつ病など精神疾患に対する社会の認知が進み、精神科・心療内科の敷居が低くなったことも挙げられます。
この適応障害、言葉の印象からは、生活や環境の変化にうまく適応できないこと、もしくは適応力が低いことを想像しがちですが、あくまで特定の環境や状況などがその人にとって耐え難いストレスに感じられているということです。その結果、気分や行動に症状が現れるのです。つまり、適応障害はストレスによる心の正常な反応の延長線上にあると言えます。
診断のポイントは、症状を引き起こしているストレスがはっきりとしていることで、本人も自覚している場合が多いです。適応障害の特徴として、ストレスの原因となっているものから離れると、症状が改善するケースが多くみられます。ただ、適応障害による抑うつ状態であっても、放置しているとうつ病などに発展する可能性もあり、適応障害とうつ病の関係は複雑です。
治療について教えてください。
うつ病では薬物療法、精神療法などの治療が中心となりますが、適応障害では、原因となっているストレスから離れること、ストレスを減らすことが何よりも優先されます。治療法は千差万別で一人一人違いますが、基本的にはストレスとなっている環境を変えること。つまり、ストレスとなる空間、場所、人間関係から離れる方法を考えていきます。ストレスが一過性のものであれば自然に軽快します。新しい状況には、必ず新しいストレスがあります。社会生活を送っていく上でも、自分のストレスの感じ方に気づき、考え方を変えるなどストレスとうまく付き合っていく方法を身に付けることが大切です。補助療法として、抗不安薬や睡眠薬など少量の薬物療法を併用するケースもあります。
人気の投稿
-
[女性の更年期障害について教えてください] 閉経の前後それぞれ5年、およそ45〜55歳が更年期です。女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下することにより、暑くないのに汗が噴き出すホットフラッシュや、動悸(どうき)などの血管運動神経症状、気分の落ち込みやいらいら、倦怠感(け...
-
ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 上田 大輔 医師 ─カクテル注射療法とはどのようなものですか。 人工膝関節置換術など整形外科領域の手術で、患者さんの満足度に著しく影響を与えるのが「手術後の痛み」です。術中は全身麻酔などによって痛みはありませんが、術後に麻酔がさめ...
-
<秋の花粉症やアレルギー症状について教えてください> 秋に、鼻水が出たりくしゃみが出たり、目がかゆくなる。実は、こんな悩みを抱える人は多く、10月ごろになると、花粉症の症状とともにせきが長く続いて来院される患者さんが増えてきます。