2017年4月12日水曜日
認知機能低下と運転免許更新
ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 松村 茂樹 院長
今年3月、高齢ドライバーの認知機能のチェックを厳しくする改正道路交通法が施行されましたが、改正のポイントについて教えてください。
2017(平成29)年3月12日から新たな改正道路交通法が施行され、加齢による認知機能の低下に着目した「臨時認知機能検査制度」や「臨時高齢者講習制度」の新設が行われました。
改正前は3年に1度の免許証更新の時だけ受けることとされていた認知機能検査でしたが、今度からは75歳以上の運転者に一定の違反行為があれば、3年を待たずに臨時認知機能検査を受けなければなりません。一定の違反行為には信号無視、通行禁止違反、合図不履行など18の基準行為が決められています。
また、75歳以上の方が免許証の更新時の認知機能検査で“認知症のおそれがある”と判定された場合には、これまでとは異なり、違反の有無にかかわらず、医療機関で認知症かどうかの診断を受け、診断書を提出する必要があります。もしも認知症と判断された場合には、運転免許取り消しなどの対象になります。警察庁の試算では、改正法施行後は15年の10倍以上の年間約5万人が医師の診断を受け、約1万5千人(15年は1472人)が免許取り消しや停止になる見通しです。
今後の課題について教えてください。
各地で高齢者の重大事故が相次ぎ、危険防止の対策が急スピードで進められています。今回の道交法改正で認知機能のチェックを厳格化したように、個人の運転能力を知ることは、個人の安全のみならず社会全体の交通安全の確保のためにも重要なことです。同時に、運転免許の自主返納を促す取り組みも進んでいます。
ただ、道内の札幌圏以外など公共交通網に乏しい地域では、マイカーが「生活の足」という現実があり、地域での高齢者の生活に自動車が欠かせない場合もあります。高齢化が進む中、代替手段の確保が大きな課題といえるでしょう。また、孫の送り迎えなど運転を生きがいや楽しみ、自立の象徴と考えている高齢者も多く、免許がなくなることが辛い決断になることを周囲が理解し、精神的にケアすることも大切です。軽度の認知機能低下の場合は運転能力に問題がない方もいますので、認知症であればすぐに免許取り消しということに関しても問題点を指摘する意見があります。
将来的には運転能力を評価する運転シミュレーターや、路上運転の客観的な評価方法の開発なども必要と思われます。
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