2015年10月21日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 本谷 宣彦 診療部長

認知症について教えてください。
 認知症とは「生後いったん正常に発達したさまざまの精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。ついさっきした行動を覚えていない、時間や場所が分からなくなる、簡単な計算ができなくなるといった認知機能の低下は認知症の<中核症状>と呼ばれ、ほとんどの人に初期からみられます。そして、中核症状によって生活が不自由になったり、不安感が募ったりするために、妄想や徘徊(はいかい)、暴力・暴言などの<行動・心理症状(BPSD)>が現れるようになります。
 認知症は原因別にいくつかの種類に分類され、日本では「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が三大認知症といわれています。脳出血や脳梗塞による脳血管性のものなど、ごく一部ですが<治る認知症>もありますが、大部分を占めるアルツハイマー型とレビー小体型は、根本的な治療法が見つかっていません。しかし、認知症は早期に発見・診断されることで、適切な治療が受けられる病気です。治療可能な認知症であれば、症状の改善につながり、アルツハイマー型認知症であれば、症状の進行を遅らせることができます。また、早い段階から適切なアドバイスを受け、介護・福祉サービスなどを活用することで、介護負担を減らすことも可能です。今までとは違う症状や行動に気づいたら、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ、できるだけ早めに医療機関の受診を促すことをお勧めします。

認知症の治療について教えてください。
 認知症の治療薬には、主に中核症状の進行を遅らせる薬と、BPSDを抑える薬があります。薬物治療は、決められた量、治療に有効な量をきちんと飲み続けることが大切です。高齢者は腎・肝機能の低下により、薬物の血中濃度が上がって副作用などが起こりやすいので、必要最小限の量から始めることも重要です。また、胃薬や抗潰瘍薬など、比較的広く処方されている薬、いつも使っている薬の中にも認知症を招くものがあるので注意が必要です。患者さんが若い頃から長期間にわたり同じ処方を続けている薬を減量や中止するだけで、症状が改善したケースも少なくありません。
 薬を使わない非薬物治療には、元気だった若い頃の記憶を思い出し、気分を安定させ、脳を活性化させる「回想療法」、懐かしい歌を歌ったり、クラシック音楽などを聴いたりすることで脳を刺激する「音楽療法」などがあります。
 認知症の治療は長期にわたり、家族内だけで問題を解決していくのは難しいです。介護する家族に心のゆとりがあり、笑顔で生活できることが、患者さんの安心にもつながります。一人で抱え込まず、介護サービスや、医療・福祉機関などの専門家、家族会など、認知症についての相談窓口を利用しましょう。