2010年10月27日水曜日

「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

非びらん性胃食道逆流症とはどんな病気ですか。
 胸焼けしたり胃酸が込み上げたりするなどの逆流症状を来す疾患を胃食道逆流症(GRED)と言いますが、その中で食道に炎症を認めるものを逆流性食道炎、炎症を認めないものを非びらん性胃食道逆流症(NERD)と言います。
 GREDは食生活の欧米化、高齢化が進んだのに加えて日本人のピロリ菌感染者が減ってきたことなどにより今後の増加が予想されています。そして、GREDの患者さんの約70%がNERDであるとされ、その原因がまだ明らかにされていないため、治療にも難渋することが多く、近年問題となっています。
 NERDの患者さんは逆流性食道炎の患者さんと比べて胃酸の逆流の程度は軽いにもかかわらず、逆流性食道炎の患者さんと同等以上の胸焼け症状を自覚することが特徴です。その原因として胃酸以外の液体や気体の逆流の関与、逆流に対する食道の知覚過敏、逆流が関与しない食道の運動機能異常などが考えられています。
 NERDの診断は、症状と逆流との関連性を評価する有用な検査として「食道pH・多チャンネルインピーダンスモニタリング」というものがありますが、現状では国内の一部の限られた施設でしか行われておらず、日常臨床では難しいため、逆流症状があるが、内視鏡検査で食道に炎症所見が認められないことにより診断されるのが一般的です。

治療法について教えてください。
 NERDの治療は、逆流性食道炎と同様に第一選択薬に「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」という強力な酸分泌抑制薬を使用しますが、50%近くが標準的なPPIによる治療に反応しないため、その場合は投与量や投与方法を変更したり、さらに消化管運動改善薬、漢方薬などを併用したりします。以上の内科的治療でも効果が乏しく、逆流症状によって著しいQOL(生活の質)の低下を来している場合は、逆流防止手術が選択されることもあります。
 NERDは、「見えない現代病」ともいわれ病気としての認知度が低く、病変が見つからないことで気のせいだと言われたり、胃炎などほかの病気と間違われて不要な薬が処方されたりしかねない病気ですので、左記のような症状がある人は早めに専門医を受診しましょう。

2010年10月20日水曜日

「歯科金属アレルギー」

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 院長

歯科金属アレルギーについて教えてください。
 金属アレルギーといえば、汗や体液によってアクセサリーや時計などの金属が溶け出し、皮膚にかゆみや湿疹(しっしん)を引き起こすという症状が一般的ですが、歯の治療で用いた金属が原因で引き起こされる歯科金属アレルギーもあります。これは、金属の冠や支台、インプラントに含まれるニッケルやパラジウムなどがだ液で溶けて、体内に蓄積されることによって起こります。症状としては、手のひらや足の裏に水ぶくれのようなものが現れる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、アトピーに似ているが食べ物に反応しない偽アトピー性皮膚炎、顔に赤くカサカサした湿疹ができる顔面湿疹などが挙げられます。
 皮膚科で検査しても原因が特定されず、対症療法(病気の根本原因にかかわらず、症状を抑えることを目的とした治療)で治癒しなかったり、再発を繰り返す場合には、歯科金属アレルギーが疑われます。

診断方法や治療法を教えてください。
 金属アレルギーの有無はパッチテストで判定できます。パッチテストとは、歯科治療に使用される金属に対応したパッチを皮膚に張り、どの金属にアレルギーがあるかを調べる検査です。歯科金属アレルギー治療の一環として、パッチテストを行う場合は保険が適用できます。当クリニックでは17種類の金属アレルギーに対するパッチテストを実施しています。パラジウムなど一部の金属は、少し時間が経過してからアレルギー反応が発現することがありますので、48時間後、72時間後、7日後に金属アレルギーの有無を判定しています。
 金属アレルギーがあった場合、とりあえず歯の金属冠をはずして様子をみます。本来は症状がなくても、金属を口腔(こうくう)内に入れず、代替のオールセラミックやハイブリッドセラミックを歯冠修復に使用するのが理想的です。しかし、保険が適用にならないため費用が高くなり、すべての歯科金属を排除するのは現実的には困難です。小臼歯と前歯については、プラスチックの一種である硬質レジンを保険適用で使用することができます。
 いずれにしても、金属アレルギーの傾向があり、原因不明の皮膚炎や症状に悩まされている人は、一度歯科金属アレルギーに詳しい歯科医を受診し、原因を特定することをお勧めします。

2010年10月13日水曜日

「歯科矯正」

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

なぜ、歯科矯正が必要なのですか。
 初対面の人を見るとき、歯並びやかみ合わせは、顔の印象を決める大きな要因の一つです。実際患者さんの中には、歯並びが悪く「口をあけて笑うことができない」「人前で話したくない」など、見た目のコンプレックスから歯科矯正を始める人が多いのも実状です。しかしながら、歯並びやかみ合わせを治すということは、ただ審美的にきれいな口元を作り出すことだけが目的ではありません。
 歯並びが悪いと、歯磨きが隅々までできず、虫歯や歯周病、口臭の原因になります。しっかりとかんで食べることができないので、胃腸など消化器官にも大きな負担がかかります。また、かみ合わせが悪いと、肩凝りや頭痛、顎(がく)関節症の原因にもなります。前歯がかみ合わない開咬(かいこう)や、下のあご(歯)が出ている反対咬合(こうごう)などのケースでは、発音に影響する場合があります。さらに、正しいかみ合わせでよくかむという事は、脳の発達に良い影響を及ぼすという研究結果もあります。
 きれいな歯並びを持つことは、口の中の健康、そして全身の健康を維持することにつながります。歯科矯正は、他の病気を治すのと同じように歯の正常なそしゃく機能を回復することと、健やかな心と体をつくるための歯科治療なのです。

歯科矯正を始める時期について教えてください。
 年齢に上限はありませんが、成長期にある子どもは成長を利用しながら治療を進められるので、条件がより有利になるといえるでしょう。子どものうちに適切な検査・診断を受け、必要であれば矯正治療を行ってきれいな歯並びにするのが理想的です。
 日本では歯科矯正に対する認識が欧米に比べるとまだ低いといえますが、近年は成人の矯正治療も増加傾向にあります。成人矯正の大きな問題点であった矯正装置の見た目の問題も、矯正装置(ブラケット)を歯の裏側に付ける見えない治療方法や、表側でもセラミックや人工ダイヤなどの素材を使った目立たない治療が可能となっています。また、金属アレルギーに対しては、チタン製やニッケルの含有量の少ないブラケットやワイヤーも開発されています。
 歯並びやかみ合わせのタイプや程度によって治療に最適な時期や内容は異なりますので、まずは専門医に気軽に相談してみてください。

2010年10月6日水曜日

「過敏性腸症候群」

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

過敏性腸症候群とはどのような病気ですか。
 下痢や便秘などを繰り返し起こし、腹痛を主とするおなかの症状があるのに、検査をしても原因となる異常が見つからない病気です。症状は大きく分けて、頻繁におなかが痛くなり、下痢をするタイプ(下痢型)、便秘が続き、排便の前におなかが苦しくなるタイプ(便秘型)、下痢と便秘を繰り返すタイプ(混合型)の三つに分けられます。便通の異常以外に、いつもおなかが張った感じがする、便が残っているような気がする、おなかがゴロゴロ鳴るといった症状を伴う場合もあります。
 過敏性腸症候群の症状に悩んでいる人は、全人口の約10%といわれ、ここ数年で増加傾向にあります。しかし、実際に医師の診察を受けている人はその半数以下であり、多くの人が一時的な下痢や便秘と思い込んで、市販の薬で対処するなど自己流の治療を行っているようです。
 過敏性腸症候群の原因は、まだはっきりと解明されてはいませんが、不規則な生活習慣や食習慣の乱れ、ストレスなどが関係しているのではないかと考えられています。感染性腸炎に罹患(りかん)した後に発症する場合もあります。

過敏性腸症候群の治療について教えてください。
 問診で症状を聞き、血液や便、X線(レントゲン)撮影などの検査を行います。必要があればバリウム検査や大腸内視鏡検査なども行い、炎症や潰瘍(かいよう)など別の病気がないかを調べます。
 過敏性腸症候群は、その主な原因が心理的・精神的な問題と深く関係している場合が多いため、まず病気についてよく理解し、病気が起こった背景を明らかにし、医師と深い信頼関係をもって二人三脚で治療を進めることが重要です。治療の主軸となるのは、生活習慣と食事の改善です。毎日決まった時間に食事を取る、夜遅くの飲食は避ける、適度な運動をする、睡眠をしっかりとるなど、規則正しい生活を送れるよう支援していきます。また、下痢や便秘などの症状を改善するために、内服薬による加療を行います。場合によって、軽い精神安定剤や抗うつ剤などを処方することもあります。
 「たかが便秘」「単なる下痢」だからと便通の異常や腹部の張り、残便感などの症状を放っている人もいますが、中には深刻な病気が潜んでいる場合もあります。このような症状でお悩みの人は一度、専門医(消化器内科など)を受診することをお勧めします。