2008年7月23日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木 伸 医師

動脈硬化症とはどのような病気ですか。

本来、動脈は弾力性があるものですが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力の無い繊維が増えたりすると硬くなります。さらに、血管の内側に粥(じゅく)状の塊ができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、塊(かたまり)を覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管内に流れ出て、その後血栓となって血液の流れを止めてしまいます。心臓の血管が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳では脳梗塞、足では壊疽(えそ)になります。動脈硬化症は生命にかかわる重大な病気ですから、早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤(じゅうとく)な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが大切ですが、最近では薬物療法が可能になってきています。

原因と予防方法を教えてください。

動脈硬化症は、主に生活習慣病の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症をきちんと治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者と予備軍がいます。軽度のうちは自覚症状が無いため、「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、糖尿病があると2~3倍も動脈硬化になりやすいといわれています。動脈硬化症から、脳梗塞、心筋梗塞に至ることがあり、高血糖が原因で十数年後に腎(じん)不全(透析)、失明など重篤な症状に進行する場合もあります。 治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病はほとんど出ません。
また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。コレステロール値や中性脂肪値などにも注意が必要です。通院を続け、適切な投薬と数値管理を行えば、日常生活には支障ありません。生活習慣病は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、若年層でも発症します。食事を野菜中心の和食にする、運動を心掛けるなど、日常生活の見直しも必要です。

2008年7月16日水曜日

「尖圭(せんけい)コンジローマ」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

尖圭コンジローマについて教えてください。

尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染による性感染症のひとつで、性器や肛門周辺にたくさんのイボができます。HPVには良性型と悪性型があり、尖圭コンジローマは良性型が原因といわれていますが、まれに悪性型が見つかることがあり、悪性型は子宮頚(けい)がん、陰茎がんと関係が深いといわれています。HPVはほとんどの場合、性交や類似する行為によって感染します。コンドームを使用して皮膚や粘膜が触れ合うことを避けることで、多少は予防効果がありますが、広い範囲が感染している場合は、予防できません。手指、器具などを介して感染することもまれにあるようです。
一般に感染してからイボができるまで3週間から8カ月(平均2.8カ月)。潜伏期間が長い上、期間も人によってさまざまなので、症状が現れた時点で「誰から感染したのだろう」と考えても、パートナーが長期間一定していない場合は特定することが困難です。年代としては、20代の男女にもっとも多くみられます。尖圭コンジローマに限らず性感染症にかかったら、パートナーも検査・治療を受けないと、パートナーから再感染する「ピンポン感染」を防げません。

症状、治療法について教えてください。

尖圭コンジローマのイボは、乳頭状、カリフラワー、ニワトリのとさかのような、と表現され、巨大化することもあります。イボ以外にかゆみや痛みがないことから、病気に気付きづらく非常にやっかいです。女性の場合は子宮がん検診や産婦人科の検診で偶然発見されることがあります。
治療は、直接イボをとってしまう外科的療法と、塗り薬の処方が一般的です。手術によって目に見えるイボをとっても、周辺部まで感染が及んでいる場合は再発も考えられます。日本では、2007年12月に厚生労働省から認可された塗り薬があります。これは、週3回就寝前に塗布して、起床後に薬剤を石けん水または温水で流します。
治療は長期に及ぶことが多く、一度治療しても再発する場合があるので、定期的に診察を受ける必要があります。

2008年7月9日水曜日

「顔色と疾患」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

顔色で、どのようなことが分かりますか。

臨床の場ではまず、患者さんの話を聞く問診、顔色や眼の輝き、表情などを見て健康状態を判断する視診、脈などをとる触診、胸や背中に聴診器を当て、指先などでたたいて音を確認する聴打診を行うのが一般的な流れです。
この中でも、「視診」は、健康状態を判断する大切な要素です。代表的な「顔色」は、たとえば青白いなら貧血・低血圧、赤っぽいなら発熱など、特に急性期の症状の判断に有効です。ほかにも黒ずんでいれば腎臓や副腎ホルモンの疾患、黄色っぽければ肝臓障害による黄疸(だん)を疑います。顔色以外でも、顔のむくみで心不全や腎不全、甲状腺の機能低下が考えられます。
生まれつき色白な人で赤みがないと「顔色が悪い」と指摘されることが多いと思いますが、検査をして異常がなければ心配する必要はありません。若い女性で青白い顔色の場合は、鉄欠乏性貧血であることが多いです。月経などで鉄分不足になりやすく、さらに無理なダイエットなどで症状が悪化します。白血病など大きな病気が隠れている場合もあるので、一度医師に相談することをお勧めします。

顔色以外で、視診で判断できることはありますか。

顔とともにむくみやすいのが足です。両足が立ち仕事や夕刻になるとむくむのは、あまり心配ありません。片足だけが時間に関係なくむくむようなら腎臓や心臓の疾患が考えられます。手指で、第1関節が太くなっているのは年齢による関節症である場合がほとんどですが、第2関節が太くなっているのは膠原(こうげん)病の可能性があります。また、指先が広がる「バチ状指」は肺疾患の人に多い症状です。爪の色やスジで病気が分かることもあります。
医師は、患者さんのさまざまな部位、状態、症状を見て診断の一助にします。本やインターネットで調べて自己診断するのは危険です。気になることがあったら、積極的に医師に相談してほしいと思います。

2008年7月2日水曜日

「血尿と膀胱(ぼうこう)がん」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

血尿について教えてください

血尿で考えられる病気としては、尿路感染症、尿路腫瘍、尿路結石、特発性腎出血、尿路結核などが挙げられます。中でも、特に注意が必要なのは、特別な症状がないのに突然、肉眼でも確認できる鮮やかな血尿が出た場合です。これは無症候性血尿と呼ばれるもので、膀胱がん、腎がん、腎盂(う)尿管がん、前立腺がんなど、泌尿器系がんである可能性があります。痛みや発熱などの症状がなく、翌日には血尿が治まっていたとしても、「疲れのせい」などと自己診断で放置せず、必ず泌尿器科を受診してください。
血尿の原因はほかにも膀胱炎や尿路結石などがありますが、これらは排尿痛や背部、側腹部の激痛などを伴うため発見は比較的容易です。

膀胱がんについて教えてください。

血尿が出て受診した場合、特に中高年には泌尿器科的精密検査が必要となります。主な検査としては、尿の細胞検査、採血、超音波検査、造影剤を注射して腎臓から膀胱の写真を撮る排せつ性尿路X線撮影、CTスキャン、膀胱鏡検査などを実施します。いずれも外来で行うことができます。
膀胱がんは、早期発見ができれば、内視鏡による切除手術で取り除くことが可能です。しかし、腫瘍の度合いによっては膀胱を摘出し、小腸で人工的な膀胱をつくるということにもなりかねません。早期発見・早期治療のためにも、血尿というサインを見逃さず、会社の検診や一般の健康診断などで尿に鮮血反応が見られた場合も、ぜひ泌尿器科で専門医の診断を受けてください。
また、年々増加傾向にある前立腺がんは、50歳を過ぎると発症率がぐっと高くなります。排尿回数が多い、残尿感がある、排尿まで5秒以上かかるなどの症状がある人は、年に一度、前立腺がんの検査を受けることをお勧めします。
がんはもちろんのこと、そのほかの疾患も早期に治療を始めれば、大事に至らずに済むことが多くあります。わずかでも気になることがあれば、恥ずかしい、面倒臭いなどと思わずに、専門医にご相談ください。