2007年1月31日水曜日

「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

COPDについて教えてください。

「Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)」の略で、気管支の炎症や肺の弾力性の低下によって気道が狭窄(きょうさく)し、呼吸機能が低下する慢性気管支炎や肺気腫を指します。2000年のWHO(世界保健機関)の調査では世界の死亡原因の第4位で、20年には虚血性心疾患、脳血管障害に次いで第3位になると予想されています。日本には予備軍も含め500万人以上の患者がいるといわれています。  原因は喫煙や大気汚染、職業上の塵埃(じんあい)暴露などですが、最も大きいのは喫煙です。特に40歳以上の男性に多く、喫煙者の約2割の人がCOPDになるといわれています。せき、たん、体動時の息切れが主な症状です。正常な肺胞は膨張と収縮を繰り返して新鮮な空気を取り入れますが、COPDでは肺胞壁の炎症、破壊による気腔の拡大、気管支支持組織の断裂、気管支の慢性炎症による狭窄などによって換気機能が低下します。肺胞に取り込まれた空気が外へ出にくくなり肺が膨張します。破壊された肺胞は元には戻りません。

診断、治療法について教えてください。

診断は、喫煙習慣、せき、たん、息切れといった症状、視診、打診、聴診に、レントゲン、呼吸機能検査、胸部CT検査などで詳しく調べます。特に呼吸機能検査は息切れの発症を早期に検知できます。似た症状の疾患として、気管支ぜんそく、肺結核後遺症、気管支拡張症、肺線維症などがあります。  治療には、まず禁煙が一番です。禁煙により肺機能の低下を緩やかに抑えられます。最近は、禁煙外来を行なっている医療機関が増えているので、なかなか禁煙できない人は受診するといいでしょう。禁煙プログラムに沿って保険診療が受けられます。  薬物療法は症状の軽減、増悪の頻度を低下させ重症化を防ぐのに有用です。吸入用抗コリン薬を中心にその他の薬剤との併用が一般的で、残っている呼吸機能を最大限に生かすために、理学療法、運動療法、食事なども大切です。進行して呼吸不全になった場合は酸素療法が必要です。日常生活の注意点としては、人込みを避ける、寒冷刺激を受けない、普段から風邪などの感染症対策を行うことなどが重要です。

2007年1月24日水曜日

「これからの分娩(ぶんべん)」について

ゲスト/愛産婦人科 三宅 敏一 医師

出産に際して重要なことは何ですか。

妊娠した女性が受診される際に、まずじっくりご夫婦と話し合う時間を大切にしています。そのとき、お産には最悪の場合、妊婦の死亡、胎児・新生児の死亡をはじめとした合併症のリスクがあるということをお話しします。日本は世界的に見て、非常に分娩環境が良く、妊婦、新生児、乳児の死亡率も先進国でも低い部類に入ります。しかし、出産には常にリスクが伴うことを妊婦さん、そして父親になるご主人、双方のご両親などにきちんと理解していただきたいのです。
出産に際して医師および助産師が必死で取り組むのは当然ですが、妊婦さんやご主人にも同様の心構えで取り組んでもらい、リスクを極力減らしたいと考えています。

お産に関して、最近の傾向というのはありますか。

立ち会い出産を希望する人が増えています。ある調査では夫の八割以上が立ち会いを望んでいるという結果もあります。私は強制はしませんが立ち会い出産を推奨しています。夫の存在は、妊婦さんの支えになるということはもちろん、医療の現場を自分の目で見て納得するという意味合いからも、ぜひ立ち会ってほしいと考えています。
また、妊婦さんの希望としては、同じ助産師に、継続的にきめ細かなケアをしてもらいたいというのがあります。これは、今後産科医師が減少するという日本の現実を考える上でも重要なことだと思います。助産師と妊婦が協力して出産に取り組み、医師が万全のバックアップ体制をとる。ひとたび妊娠・分娩が急変すればいつでも医師が駆け付け帝王切開や緊急手術で対応する、あるいは高次医療機関へ搬送できる、という体制が必要なことはいうまでもありません。
助産師分娩は時間がかかりますが、出産スタイルも自由で、会陰(えいん)裂傷をおこしたり、会陰を切開することも少なく、また、妊婦さんのアメニティが高く、産後の回復も早いことが特徴です。今後は妊婦さん側の希望によってこのような出産が増えると思います。

2007年1月17日水曜日

「リウマチの早期診断と新しい治療」について

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチについて教えてください。

関節リウマチは、膠原(こうげん)病という自己免疫疾患の一種で、全身の関節が炎症を起こし壊れていく病気です。重症になると歩行困難や痛みのため日常生活が大きく制約されます。原因は不明で、女性は男性に比べ3~5倍と多く、主に20~60代にかけて発症し、40代がピークで決してお年寄りの病気ではありません。
リウマチの完治は難しいのですが、最近はさまざまな治療薬があり、上手に付き合っていくという心構えが大切です。リウマチを進行させないためには、初期の段階で治療をスタートすることが肝心です。
初期の症状としては、朝起きたときに「手を握りづらい」などの関節のこわばり、関節の痛みや腫れ、むくみ、微熱やだるさが2週間以上続くなどがあります。このような症状があらわれた場合は、なるべく早めにリウマチ専門医、または整形外科を訪ねて検査を受けてください。

治療方法について教えてください。

関節破壊を予防するために、できるだけ早期から抗リウマチ薬を使用します。炎症や痛みを抑えるため、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬を使用することもあります。同時にリハビリや湿布、関節注射、リウマチを正しく理解するための教育なども必要に応じて行います。関節の変形や脱臼などが起こった場合には、外科手術を行うこともあります。
このような治療は以前から続けられてきたものですが、近年、レミケードやエンブレルなどの生物製剤が出てきて、リウマチ治療に画期的な効果をあげています。症状を和らげるだけでなく、関節の破壊を食い止める効果があります。中には、発症以前と変わらずに生活できるほど改善する場合もあります。ただし、肺炎や結核など感染症にかかりやすくなる、健康保険が適用されていても高価であるなどの問題点もあります。治療法については、自分で納得することが重要ですから、よく医師に相談するとよいでしょう。

2007年1月11日木曜日

「高血圧」について

ゲスト/宮の沢内科・循環器科クリニック 佐藤 愼一郎 医師

高血圧について教えてください。

まず、高血圧の基準ですが、日本でも世界でも上(収縮期血圧)が140mmHg以上、下(拡張期血圧)90mmHg以上で高血圧ということになります。  高血圧は、肩凝り、頭痛、動悸(どうき)、めまいなどの症状が現れることもありますが、多くの場合はっきりとした症状がないため、健康診断などで指摘されても、あまり気に留めない人が多いのも事実です。  しかし、高血圧の本当の恐ろしさは合併症にあります。高血圧によって血管や心臓に強いストレスをかけ続けていると、やがて狭心症、心筋梗塞(こうそく)、心不全、脳卒中、腎不全など、生命の危機や、大きな障害に結びつく重大な疾患を引き起こす要因となります。健康診断などで医師に高血圧を指摘された場合は、必ず専門医を受診してください。

高血圧と診断されたらどうなりますか。

最初に過去の経過や家族歴、合併症などから重症度を評価し、軽・中等症の場合、治療のスタートは食事療法、運動療法など生活習慣の改善から始まります。 また、高頻度に合併する糖尿病や高脂血症のコントロールが特に大切です。  食事面では、まず塩分制限が重要になります。高血圧患者の一日の塩分摂取目標は6g以下です。さらに体重がオーバーしている場合は、カロリーコントロールが必要です。適度のアルコールは構いません。喫煙している人は、ぜひ禁煙してください。タバコは血管をひどく傷めます。  運動は、軽めの運動を30分程度、週に3回以上続けると効果があります。ひと駅歩く、エレベーターを使わないなど日常の中で意識して運動量を増やすといいでしょう。  このような生活習慣の改善を行っても、血圧が高いままの場合は、薬物治療を開始します。最近は副作用も少なく優れた効果の降圧薬も多く、服薬の継続が血圧の安定をもたらし、心・脳・血管系の病気の予防や健康寿命に役立っています。もちろん、減塩や肥満の是正など生活習慣の改善が順調であれば、それだけで血圧が良好に管理されることも可能です。ただし、家族歴のある人は慎重な観察が必要です。いずれにしても、自分勝手な判断で服用を中止するのは危険です。