2005年3月23日水曜日

「噛(か)むこと」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

最近、子どもたちの噛む力が弱くなっているといわれていますが。

 ハンバーグや麺類、カレーライスなどは、子どもや若者が好む料理ですが、あまり噛まずに食べられるメニューでもあります。最近は、咀嚼(そしゃく)せずに流しこめるこのようなメニューが食生活の中心になっているため、乳歯の時期からきちんと噛む習慣ができず、そのまま学童期、そして大人になってしまうというケースが多く見られます。噛むことは、人間にとって、とても大切な行為です。噛むことによって、脳にほど良い刺激が与えられ、脳神経の血流を促進します。成長期の子どもの、知能の発達を促し、お年寄りの老化防止や認知症防止にもひと役買います。また、噛む回数が減ることで、歯や歯を支える歯肉、歯根膜、歯層骨などの成長が滞ったり、歯垢(こう)がたまって歯周病にかかりやすくなったりします。口腔(こうくう)周辺の筋肉が鍛えられず、歯並びに影響することもあります。

きちんと噛むには、どうしたら良いのですか。

 まず、きちんと噛める咬(か)み合わせであることが重要です。開咬(かいこう)では前歯で噛み切ることができませんし、極端な上顎(がく)前突や下顎前突でもスムーズに噛めません。日常生活の中では、繊維質のものや硬いものを幼児期からメニューに取り入れ、噛む食感を楽しむようにしてあげましょう。最初は苦手でも、調理方法などを工夫して食べさせる努力をします。時間をかけて楽しく食事できる雰囲気づくりも大切です。「早く食べなさい」「残さないで」などと小言を聞きながらでは食も進みませんし、必要な唾液の分泌量も減ってしまい、消化にもよくありません。
 食べ物をちゃんと噛まない、歯ごたえのあるものを食べないと唾(だ)液の分泌量が少なくなります。歯垢(しこう)が付きやすい食生活をしていると、口腔内が不衛生になり、歯や歯茎の病気、口臭の原因になります。ペットの世界でも軟らかいペットフードばかり食べているペット達には、虫歯や歯周病を起こしている例が多数みられます。さらに、唾液には、食べ物の消化を助ける働きがあります。唾液に含まれる消化酵素と食べ物が口の中で混ぜ合わされ、消化しやすい状態にして胃に送ります。十分に噛まずに食べることによって、消化器官に大きな負担をかけるとともに、満腹感を感じるのが遅れ、食べる量が増えてしまい、肥満の原因ともなります。

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