2022年5月11日水曜日

大人のADHD(注意欠陥多動性障害)

 ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院 太田 健介 院長


大人のADHDについて教えてください。

 ADHDは「注意欠如多動症」という発達障害です。具体的な症状は、忘れ物やなくし物が多い、遅刻が多い、部屋を片付けられないなどの「不注意」、落ち着きがない、じっとしていられない、一方的にしゃべりすぎるなどの「多動性」、後先考えずに発言・行動する、怒りや欲求を抑えられない、物事にのめり込みやすいなどの「衝動性」が特徴です。

 ADHDは子どもの障害と思われがちですが、大人のADHDは増加傾向にあり、成人の国内有病率は約5%と、報告があります。受診のきっかけは、職場など周囲から勧められた場合や、うつ病や社交不安障害などの他の疾患で受診する場合が多いです。子どもの頃には問題がなく、あるいは程度が軽く、大人になってから初めてADHDの診断がつくケースも多く、職場などの複雑化した社会生活や対人関係の中で問題が顕在化し、離職や失業、離婚などに至ることもあります。

 大人のADHDは「二次障害」としてうつ病や社交不安障害、摂食障害、依存症などの精神疾患を合併している割合が高いです。また、社会的なコミュニケーションや対人関係の困難さ、こだわりの強さといった特徴がある発達障害「自閉スペクトラム症(ASD)」を併発しているケースが約半数に認められます。


診断と治療について教えてください。

  診断は、本人への診察だけでなく家族など身近な人からも生育歴を聞き取り、母子手帳や通知表などの資料も参照しながら、知能検査や心理検査を行って総合的に判断します。

 治療方法は、大きく分けて心理教育や環境調整などの心理社会的な介入と薬物療法の2つがあります。前者は、本人がADHDの症状について詳しく知り、自分の困りごとをADHDという観点から整理して理解したり、日常生活をうまく運んでいくための対処法を学んだりする治療のことです。薬物療法はメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン塩酸塩などのADHD治療薬が有効なケースも多いです。二次障害には症状に応じた治療を実施します。

 日常的に生きづらさを感じているなら、まずは適切な診断を受けることが重要です。何が日常生活で困難になっているかを知れば、その対応策はいくつもあり、周囲のサポートを得られる可能性も高いです。

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