2014年8月6日水曜日
産後の精神疾患
ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 松山 智子 医師
産後になりやすい心の病気について教えてください。
出産後3〜5日ごろの産褥(さんじょく)期には「マタニティー・ブルー」とも呼ばれる、感情の起伏が激しくなったり、涙もろくなったりして、眠れない時期に悩むことがあります。しかし、これは1週間ほどで自然に症状が消えるケースがほとんどで、産後の精神疾患とは異なります。
出産後、2週間から数ヵ月以内の時期に、気分がひどく沈む、疲れやすく気力が出ない、ささいなことでイライラしたり不安になる。また、子どもの健康や将来を過度に悲観したり、満足な育児ができていないと自責的になるなどの症状が現れ、2週間以上続くようなら産後精神病といった精神疾患が疑われます。出産後の急激なホルモンバランスの変化の他、母親になったという重圧感、育児による心身疲労、職場復帰への焦りなどが引き金となりやすく、育児への手助けがない、経済的な悩みがある、相談する人がいないといった状況も、発症リスクを高めるとされています。
核家族化が進んだ現代、特に初めての赤ちゃんの場合は、孤独や不安にさいなまれる母親も多いようです。対処法は、一人で抱え込まず、身近な人に打ち明けること。周囲の理解や支援も大切です。重症の場合は、専門医による治療が必要ですので、症状が数週間も持続したり、日常生活や育児に支障を来すようであれば、早めに受診されるほうがいいでしょう。周囲の人が気付いた場合も、受診を勧めるようにしてください。
産後の精神疾患の治療について教えてください。
産後の精神疾患の治療は、カウンセリングや投薬が中心となります。カウンセリングでは、ご本人の悩み、状況、症状など日々の生活の中の具体的な問題を話し合い、その人なりの解決法を選択する過程を援助していきます。
抗うつ剤などの薬物治療は、母乳で育児を行っている母親には薬の影響が気になるところです。どうしても母乳での育児を断念したくない方は、事前に担当医師に相談して、薬を使わずに治療を進めていくことも可能ですが、症状によっては授乳を中止していただき、薬物治療による病状の改善を優先させるケースもあります。
うつ病など他の精神疾患と同様に、早期発見・早期治療が重症化や再発を防ぐ最大のポイントです。
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